錦織 全米日本人初準V(2)草食系が獲物を狙う「肉食KEI」へ

[ 2015年1月17日 10:30 ]

錦織が14年の「ベストマッチ」と位置づけたジョコビッチ戦(AP)

 1回戦でオデスニク(米国)にストレートで快勝した錦織は、大会が進むごとに勢いを増していった。

 3回戦まで1セットも落とさずに勝ち上がると、4回戦は同世代ライバルのラオニッチ(カナダ)と激突。ナイトセッションに組み込まれた一戦は全米オープンの歴史に残る“真夜中の死闘”となった。試合時間は4時間19分。午後10時すぎに試合が始まり、錦織が逆転で凱歌を上げたのは翌日の午前2時26分。最も終了時刻の遅い試合として大会史上に刻まれた。

 大会を中継したWOWOWの平林武志チーフプロデューサー(39)は錦織の変化を肌で感じていた。「普段は穏やかで結構草食系の男の子。それが勝つごとにケガの不安も薄れて、顔つきもどんどんよくなっていった」。ぶっつけ本番の不安は、いつしか優勝への期待に変わっていた。ラオニッチ戦後に飛び出した「勝てない相手はもういない」の発言は、優勝という獲物を狙う肉食系への変貌を物語っていた。

 準々決勝もワウリンカ(スイス)とフルセット、4時間超えの激闘となった。振り子のように行き来する試合の流れ。勝利の糸をたぐり寄せたのは錦織の集中力だった。合計ポイント数では177―181と相手に劣りながら、勝負どころに力を凝縮して発揮し、全豪王者を倒して4大大会初のベスト4入りを決めた。

 そのタフネス、歴代1位というフルセットでの勝率の高さに驚がくの思いを込め、海外メディアからは「マラソンマン」という声も上がり始めた。少しいいプレーをしてはケガを繰り返す。そんなひ弱なイメージは確実に過去のものになりつつあった。

 迎えた準決勝は錦織が昨年の「ベストマッチ」と位置づけた試合だ。相手は世界1位のジョコビッチ(セルビア)。コート上の気温は35度を超え、過酷な消耗戦となっていた。第2セットを相手のペースで奪い返された錦織は、ここで攻撃のギアを1つ上げた。「もっと早くポイントを終わらせるように、バックのストレートも、フォアも、もっとしばいていくことを考えた」。じりじりと上がっていく体温と錦織の攻撃のテンポ。先に音を上げたのは王者の方だった。

 最後はめった打ちといってもいいほどにジョコビッチを翻弄(ほんろう)した。世界1位を4大大会の準決勝でしばき倒し、アジア勢初の決勝進出。フロックではなく、実力で勝ち取った勝利であることは誰の目にも明らかだった。日本人による4大大会優勝という歴史的偉業は、間違いなく手の届くところまで来ていた。

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2015年1月17日のニュース