羽生 全日本3連覇へ“大人の決断”後半4回転封印

[ 2014年12月17日 05:30 ]

帰国した羽生は金メダルと花束を手に笑顔を見せる

 フィギュアスケートのGPファイナルで日本男子初の連覇を達成したソチ五輪金メダリスト・羽生結弦(ゆづる、20=ANA)が16日、スペイン・バルセロナから成田空港着の航空機で帰国した。3連覇が懸かる26日開幕の全日本選手権(長野ビッグハット)では11月のNHK杯(大阪)、ファイナルと同様にショートプログラム(SP)、フリーともに演技後半の4回転トーループは封印。中国杯(11月、上海)で負傷し、自分の体を冷静に見つめるプリンスが“大人の決断”でタイトルを守る。

 しっかりとした足取りで、羽生が歩を進めた。11月8日の中国杯男子フリー直前の6分間練習で頭部、左大腿など5カ所を負傷。11月9日に緊急帰国した際は、車いすで自力歩行が不可能だった。到着ロビーに詰めかけた約100人のファンに声をかけられると、柔らかい笑みを浮かべる。悪夢の中国杯から約40日。日本男子初のファイナル連覇という偉業を達成し、プリンスが堂々と凱旋帰国だ。

 「連覇についての喜びはあんまりない。今年のファイナルで一生懸命、頑張った。滑っていて楽しかった。試合で幸せな気持ちで滑れたのって何年ぶりだろう」

 世界一のスケーターにとって、負けられない戦いがすぐに始まる。26日開幕の全日本選手権に向け、羽生は既に本番モードだ。「今から試合が始まっている意識を持ちながら、短い期間でどれだけ成長できるか」。拠点のカナダ・トロントに戻らず、NHK杯からファイナルまでと同様、今後は国内で調整。オーサー・コーチからは「(ファイナルまでと)同じようにやれ」という指示があった。孤独にハードに自らを追い込む。

 7日に20歳になった。「何かが変わるってことはない」と言うものの、全日本へ“大人の決断”を下した。今季はSPもフリーも、基礎点が1・1倍になる演技後半に4回転トーループを組み込むのが理想だが、負傷の影響もあってNHK杯、ファイナルは封印。全日本でも「構成を変えるつもりはない」と明かした。「悪い意味でも頑固」と自身を評する羽生が、まだ万全とは言えない現状を冷静に見つめた。

 「自分の体を大事にしてあげたいから。これでスケート人生が終わるわけじゃない。来年の試合では考えていきたい」

 全日本では3連覇と合計300点超えに期待がかかるが、羽生にこだわりはない。「3連覇は意識していない。毎年、同じタイトルであっても全く違う試合。得点も意識していない」。代表入りが決定的な来年3月の世界選手権は、負傷した中国杯と同じ会場で行われる。「中国杯にこだわっていない。あの時はあの時。出られるなら、その時の精いっぱいの演技ができれば」。自然体のプリンスの進撃は、誰にも止められない。

 ▽全日本選手権 来年3月の世界選手権の代表選考会を兼ねて行われる。男子の枠は3で(1)優勝者が決定(2)全日本2、3位、GPファイナル出場上位2選手の中から総合的に選考(3)(2)の選考に漏れた選手、世界ランク、今季ベストスコアから総合的に選考。羽生はファイナル優勝、世界ランク1位、今季ベストスコア世界1位のため代表入りは決定的だ。

 【羽生の今季VTR】

 ▼GPシリーズ・中国杯(11月7、8日)SPは演技後半に挑戦した4回転トーループが3回転になり発進。フリーは直前の練習で中国選手と激突。強行出場しジャンプで5度転倒しながら、合計237・55点で2位に入った。

 ▼GPシリーズ・NHK杯(11月28、29日)26日の練習後に出場を決断。SPは演技冒頭に移した4回転トーループで転倒すると後半のジャンプもミス。フリーもサルコー、トーループの4回転を失敗して合計229・80点の4位でファイナル切符をギリギリでつかんだ。

 ▼GPファイナル(12月12、13日)SPは3―3回転で転倒しながら今季世界最高の94・08点をマーク。フリーも2度の4回転を完璧に決め、194・08点の自己ベスト。合計288・16点で日本男子初の連覇を達成した。

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