白鵬、男泣き32度目V 「角界の親父」大鵬の史上最多記録に並ぶ

[ 2014年11月24日 05:30 ]

32回目の幕内優勝を決め、賜杯を受け取る白鵬

大相撲九州場所千秋楽

(11月23日 福岡国際センター)
 大鵬さんやりました!!白鵬が横綱対決で鶴竜を寄り切り「角界の親父」と慕う大鵬の史上最多記録に並ぶ、32度目の優勝を果たした。6日目に高安に敗れ前半戦は鶴竜に単独トップを譲ったが、後半戦は安定した取り口で14勝1敗と勝ち星を伸ばし、夏場所から4場所連続優勝を飾った。人生の節目でこれまで何度も涙を流してきた29歳の横綱は、この日も男泣きで喜びをかみしめた。
【取組結果 星取表】

 初来日から14年あまりで味わった苦労、そして感謝の思いの全てが涙に変わってあふれ出た。

 父と慕う大鵬に並ぶ32度目の優勝。土俵を下り東の支度部屋に向かう花道で白鵬は目を潤ませ、床山に髪を結い直してもらう最中にも涙を流した。さらに満員の観客に見守られた表彰式でも、君が代を口ずさんだ時に唇をかみしめ、人目をはばからずに男泣きした。

 「角界の父の偉大な記録に並んで約束と恩返しができた」。表彰式を終えて支度部屋に戻ると「苦しんだ中で(宮城野部屋の)みんながいた。一生忘れられない出来事」と涙の意味を説明した。

 「いい相撲を取ろう」と誓った鶴竜との千秋楽。鋭い立ち合いから、すかさず右に体を開いて相手のバランスを崩す。左を差して右前まわしを握ると一気に寄り切った。

 昨年1月19日、初場所7日目。大鵬さんが死去した日も涙に暮れた。白星を飾った取組後には国技館から車で10分の「大鵬道場」に向かった。安らかに眠る大鵬さんの前で手を合わせると自然と涙がこぼれた。実はその2日前に直接会い、優勝32回を狙うことを告白し「しっかりやれよ」と背中を押されたばかりだった。その夜、「あまりにつらい…」と場所中はめったに口にしない酒を飲んで気分をまぎらわした。

 悩みがあれば相談し、生前時には誕生会を自ら開催。尊敬する人物の死によって相撲に関する判断は自分自身に委ねられた。「年齢的に稽古をし過ぎるのは良くない」。四股やすり足を中心とした量より質の内容に変更し、ケガをしない体をつくり上げた。すると一昨年は2度だった優勝が、昨年と今年の12場所で9度と量産態勢に入った。

 場所前は「考えない」と言ったV32だが、実は「ずっと意識していた」。普段は数日間サボる場所中の稽古も今回は休みなし。特に14日目は30分、千秋楽は1時間も通常より早く稽古場に下りた。「奥さんの実家の徳島に近い来年春場所までにV33を」との思いがあり、少しでも早く達成したかった。今年5月の夏場所中に紗代子夫人が第4子を流産。「精神的につらかった」。そんな時、自らを支えたのは家族の存在。この日、3人の子供と紗代子夫人を支度部屋での万歳三唱に呼び、感謝の気持ちを伝えた。

 北の湖理事長(元横綱)は「優勝40回に届く」と予測するが、自身は「この優勝に恥じないように頑張っていく」と変わらぬ精進を誓った。涙と努力で優勝を重ねた横綱にとって、32回はまだ通過点だ。

続きを表示

この記事のフォト

2014年11月24日のニュース