錦織 マリー撃破で世界一へ好発進「決勝にいくことがゴール」

[ 2014年11月10日 05:30 ]

アンディ・マリーに勝利し、ガッツポーズの錦織圭(AP)

 男子テニスのATPツアー・ファイナルが9日、英国・ロンドンで開幕し、世界ランキング5位の錦織圭(24=日清食品)が天敵から初めての白星を挙げた。年間成績などの上位8人だけが出場できるツアー最終戦。1次リーグB組の初戦で、今季初対戦となった世界6位のアンディ・マリー(27=英国)を6―4、6―4のストレートで撃破した。過去3戦全敗だった苦手の相手を下し、今季の成長ぶりをあらためて印象づける勝利。各組上位2人が進める準決勝進出に一歩近づいた。

 120%の力を出し切ったわけではない。恐らく100%の出来でもなかったはずだ。それでも元世界2位のA・マリーを苦にしなかった。1万7000人を超える超満員の観衆は勝者に惜しみない拍手を送った。選ばれし8選手だけが競い合う最終戦。シングルス開幕戦の凱歌は、地元のA・マリーではなく日本のエースに上がった。

 第1セットは互いにミスの目立つ立ち上がりだった。「最初は硬かったけど、徐々にフィーリングが良くなって自信を持てた」。第5ゲームで先にブレークを許したが、すぐにブレークバックに成功。「相手がベースラインで安定感のある選手。攻撃的にいかないと、と思っていた」

 第1セットのファーストサーブ成功率はわずか40%。それでも勝ちきれるところに強さがにじんだ。硬さが抜けるとともに力強いストロークで攻め立てた。「第2セットはほぼパーフェクトだった」と5―4で迎えた第10ゲームでぐっとギアを上げ、ストレートで試合を決めた。

 A・マリーには過去3度の対戦で一度も勝ったことがなく、それどころか1セットも奪えていなかった。「正直勝てる気がしなかった」と語っていたのが2年前の全豪オープン。互いにフットワークの良さ、ストローク力を武器にするところは似たもの同士。当時の錦織は「一番自分のテニスに近い選手」と語り、A・マリーも「自分と彼はよく似ている。違うのは背の高さ」と分析していた。

 同じ戦型ならば体格とキャリアに勝る方が優位に立つのは当然だ。しかし、今季の錦織はマイケル・チャン・コーチの下で攻撃力に一層の磨きをかけた。その攻撃力が以前は歯が立たなかった相手の堅固な守備を突き破った。

 「苦手と感じていた部分をなくしてどれだけ強い気持ちで臨めるかがキーだった」。コート外では「大統領気分」と驚くほどのVIP待遇に加え、コート内も照明を含めた派手な演出が満載だった。しかし「テニスよりもメンタルで準備ができていないと」と話していた通り集中を切らさずにボールに食らいついた。

 アジア勢として初出場を果たし、初戦で日本のテニス史に残る大きな1勝を挙げた。だが、錦織の見据えるものはもっと先にある。「準決勝、決勝にいくことがゴール」。快進撃を見せた今年の全米オープン中に錦織は「勝てない相手はもういない」と言った。その言葉はウソではなかった。「勝てる気がしなかった」A・マリーからの初勝利が、錦織の今季の成長を何よりも証明していた。

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