冨田尚弥 アジア大会選手団から窃盗追放「見た瞬間、欲しくなった」

[ 2014年9月28日 05:30 ]

日本選手団を追放された冨田尚弥

仁川アジア大会第8日

(9月27日)
 競泳ニッポンに前代未聞の不祥事が起きた。日本オリンピック委員会(JOC)は27日、仁川アジア大会で競泳男子100メートル平泳ぎ4位の冨田尚弥(25=チームアリーナ)が25日に文鶴水泳場で韓国の聯合通信社のカメラを盗んだため、日本選手団から追放したと発表した。26日夜から地元警察に事情聴取され、本人も容疑を認めているという。日本選手団の青木剛団長(67)は現地で会見を開いて謝罪。冨田は週明けに書類送検される見通しで、選手村で謹慎している。

 萩野が4冠を達成するなど、12個の金メダルを獲得した競泳陣の活躍に、水を差す事件が起こった。仁川南部警察署によると、盗まれたキヤノン社製カメラは800万ウォン(約83万円)相当で選手村で見つかった。冨田は「カメラを見た瞬間、欲しくなった」と供述。男子100メートル平泳ぎで4位に入った翌日の25日昼ごろ、応援で訪れた文鶴水泳場のプールサイドの記者席から記者が離れた隙にカメラの望遠レンズを外し、ボディーをバッグに入れて持ち去った。

 26日に大会組織委員会から日本選手団に連絡が入り、水泳場の監視カメラを確認すると、冨田とみられる人物が怪しい動きをしていた。冨田は同日午前の50メートル平泳ぎで予選落ちし、夜に事情聴取を受けた。容疑を認め、署を離れる際に被害者に謝罪し、握手をして別れた。関係者によると「すいませんでした」と話していたという。今大会の成績は、日本選手団からは抹消される見込みだ。

 大会前半戦を総括する場として設定されていた会見は一転、謝罪会見に。日本水泳連盟副会長で日本選手団の青木団長は、「心からおわび申し上げたい。人の物を盗んではいけないというのは初歩的なこと」と深々と頭を下げた。会見前には各競技の監督を緊急招集し、行動規範の徹底を訴えた。会見後にはメーンプレスセンター内の聯合通信社取材本部、主催者のアジア・オリンピック評議会、大会組織委員会を謝罪行脚した。

 国費を使って派遣された現役の代表選手が大会期間中に起こした愚行は決して一選手の問題にはとどまらない。20年東京五輪に向けて世界からの注目を集める中で、日本選手団の管理能力や指導体制のあり方にも厳しい目が注がれる。文部科学省幹部は「極めて幼稚な話。今後はJOCや競技団体で人間教育を充実させる必要があるのではないか」とバッサリ。選手団派遣の主体となるJOCの竹田会長は「あってはならないことが起きた。我々も(アジア大会から)帰ってから倫理委員会を開く」と語ったが、信頼を回復するためにも再発防止に向けて厳正な対処が求められる。

 ◆冨田 尚弥(とみた・なおや)1989年(平元)4月22日、愛知県東海市出身の25歳。豊川高、中京大を経てチームアリーナ。10年広州アジア大会男子200メートル平泳ぎで金メダルを獲得。11年の国際大会代表選考会では北島康介を破り、同年の世界ランク1位となる2分8秒25をマーク。以降、スランプに陥り、12年ロンドン五輪は出場を逃した。1メートル74、74キロ。

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