萩野 200自由形大逆転金!ロンドン、北京五輪覇者蹴散らす

[ 2014年9月22日 05:30 ]

アジア大会男子200メートル自由形で金メダルを獲得し、応援団に向かって指を突き上げる萩野

仁川アジア大会第3日

(9月21日)
 競泳が始まり、男子200メートル自由形で萩野公介(20=東洋大)が1分45秒23の日本新記録をマークし、金メダルを獲得した。ロンドン五輪400メートル自由形金の孫楊(22=中国)、北京五輪400メートル自由形金の朴泰桓(24=韓国)を破ってアジアの頂点に立った。同200メートルバタフライでは瀬戸大也(20=JSS毛呂山)が1分54秒08の今季世界最高記録で優勝。同100メートル背泳ぎは入江陵介(24=イトマン東進)が52秒34の好タイムで制し、日本は金メダル3個と最高のスタートを切った。

 表彰台の一番高いところに立っても少し頭が飛び出るぐらい。1メートル98の孫楊と1メートル83の朴泰桓に挟まれては、1メートル75の体躯(たいく)はひときわ小柄に映った。しかし、体格とパワーがものをいう自由形で、その萩野が大男たちを蹴散らした。

 「まさか勝っているとは思わなかった。最後まで焦らずに手をかくことを意識していた」。表彰台と同じように2人に挟まれてのレース。スタートから孫楊と朴泰桓が引っ張り合い、萩野はその間で息を潜めていた。「2人は積極的に競り合うはず。うまくついていこう」。150メートルのターンでは2人に0秒9以上離されて3位。だが、ためていた力を最後の50メートルで爆発させた。

 「一緒に泳いでいて、もしかしたら食えるかもと思った。少しバテているなと」。残り25メートルからみるみる差は縮まり、一気に2人を差し切った。最後の50メートルは26秒00の驚異的なラップタイム。左人さし指を掲げた先に示されたタイムは、高速水着時代の記録を0秒01上回る1分45秒23の日本新記録だった。

 会場の文鶴水泳場は、韓国国内では「朴泰桓水泳場」と命名されている。韓国のファンは地元の英雄に耳をつんざく大声援を送り、中国のファンは鳴り物の音を響かせて大騒ぎ。場内のざわつきで一度はスタートがやり直しになったほどだった。それでも萩野は「こういう状況は予想できていた。五輪も凄い歓声だったから」と冷静さを保ち、「胸を借りるつもりで自己ベストを狙って泳ごうと思った」という無欲さで大金星につなげた。

 直後の表彰式でもその落ち着きぶりは際立っていた。あとに控える100メートル背泳ぎの決勝に備えて何度も手足を動かした。「次があったので浮かれている場合じゃなかった」とすでに気持ちを切り替えていた。若くして備わった経験と落ち着きは大きな武器。200メートル自由形から約30分後の背泳ぎでは53秒71で3位にとどまったが、2種目でのメダルを獲得した。

 「自分はまだ自由形を始めて日が浅い」と語るように、個人メドレーや背泳ぎと同じようにレースに取り組み始めたのは大学に入ってからだ。それが早くも金メダリスト2人を打ち負かすほどに成長した。23日の400メートル自由形では2人との再戦もある。「また胸を借りていいレースができるように頑張りたい」と謙虚な姿勢を貫く萩野だが、その潜在能力は計り知れない。

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