伊調は世界V12、新階級58キロ級でも強さ変わらず

[ 2014年9月12日 05:30 ]

女子58キロ級決勝で相手選手をを攻める伊調馨

レスリング世界選手権第4日

(9月11日 ウズベキスタン・タシケント)
 世界大会では初めて58キロ級で出場した伊調馨(30=ALSOK)が、決勝でコブロワ(ロシア)をテクニカルフォール勝ちで下し、五輪3連覇を含む世界大会12連覇を達成した。V12は「霊長類最強の男」と称されたアレクサンドル・カレリンに並ぶ史上2位の大記録。53キロ級を制した吉田沙保里とともに、伊調が神の領域に足を踏み入れた。

 新階級でも圧倒的な強さとともに、厳しい自己評価は健在だった。計4試合、失ポイントなしの完全勝利での頂点。それでも伊調は「まだ物足りない。きょうは45点。50点と言いたいけど、自分に厳しく45点」と口を真一文字に結んだ。

 従来の63キロ級から階級を落とし、初めて臨んだ世界大会。決勝の相手は12年5月の国別対抗戦W杯で吉田沙保里を破った難敵だったが、タックルで確実にポイントを重ねた。「決勝の相手が技、うまさ、バランスとも一番だった。これからも2、3回と戦って切磋琢磨(せっさたくま)したい」と敬意を表したが、栄監督は「馨は必ずポイントにしてくるテクニックが凄い」。他を寄せ付けない強さにうなった。

 昨年の世界選手権後に5キロ軽い58キロ級への転向を決意。普段の体重は61キロで減量の負担は少ないが、当初は相手のスピードや的の小ささに戸惑った。それでも徐々に適応し、新階級について「スピーディーで連続技が出せる。自分としては、とても面白みがある」と言う。レスリングを始めた時からの恩師で、現地でV12を見届けた青森・八戸クラブの沢内和興会長も「58キロが本来の階級だと思う」と話した。

 慢性的な痛みがある首への負担を減らすため、6月の全日本選抜選手権後に約2カ月、休養したことも奏功した。練習再開後も首に負担が掛かるメニューを控え「積極的、攻撃的にということだけを考えていた」という戦い方も変更。守りも重視するようになり、要所要所でポイントを取る戦い方を追求。決勝は失ポイント0。まさに「大人のレスリング」だった。

 「次はもっといい試合ができると信じて練習するしかない。諦めたらそれで終了。その日までレスリングを続けていく」と結んだ伊調。女王のレスリング人生は当分、終わりそうにない。

続きを表示

この記事のフォト

2014年9月12日のニュース