錦織 勝って殿堂入りだ、アジア男子初4大大会Vで選出有力

[ 2014年9月9日 05:30 ]

チャン・コーチ(左)が見守る中、決勝に向けて最終調整する錦織(AP)

テニス全米オープン最終日男子シングルス決勝 錦織圭―マリン・チリッチ

(9月8日 ニューヨーク ビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター)
 アジア勢初の4大大会優勝が殿堂入りも引き寄せる。テニスの全米オープン男子シングルス決勝で、第10シードの錦織圭(24=日清食品)は8日午後5時(日本時間9日午前6時)、第14シードのマリン・チリッチ(25=クロアチア)と初優勝を懸けて激突する。アジア人として歴史的快挙を達成すれば、将来的に日本人がいまだ誰も果たしていない国際テニス殿堂入りの声が高まっていくのは確実。世界ランクは5月に記録した自己最高の9位を更新して8位に浮上。上昇気流に乗る錦織がテニスの新時代を切り開く。

 決勝前日の7日、錦織は静かな緊張感の中にいた。会場内の練習コートで正午から約1時間、いつも通りの練習メニューを消化。気負いも感じられない。決戦に向け自然体で最終調整を終えた。

 高速サーブを武器とする長身1メートル98のチリッチと錦織は過去7度対戦し、5勝2敗とリードする。今季も全米と同じハードコートで勝っているが、「本当に強くなっている。攻撃的になって、スピードのあるテニスをする」と警戒している。タフな試合になることは間違いない。錦織は日本選手で初めて4大大会で決勝進出を決めた際、「歴史をつくれてうれしいが、決勝も勝ってもう一つの歴史をつくりたい」と語っていたが、勝利はテニス界にもう一つ歴史を刻む第一歩にもなる。

 それは男子シングルスの4大大会優勝と同じように、これまでは日本もアジアも蚊帳の外にあった国際テニス殿堂入りだ。同殿堂は1954年にロードアイランド州のニューポートに設立された。博物館やコートが併設されており、芝コートのツアー大会も行われている。当初は米国選手だけが対象だったが、テニスの国際化を受けて75年から門戸を開放。毎年新たなメンバーが追加されており、選手活動だけでなく、選手育成などで貢献した人物らも殿堂入りしている。

 選手に関しては投票権を持つメディアによる75%以上の承認が必要になる。ただし、その基準はツアー優勝数など具体的な数字ではなく、「国際的に最も高いレベルでの傑出した記録とそれにふさわしい品格」などとなっている。今回、最大のチャンスを迎えたが、テニス人生の中でアジア初の4大大会男子シングルス制覇となれば間違いなくこれに当てはまる。

 殿堂入り選手はマッケンロー(米国)、ボルグ(スウェーデン)、ナブラチロワ(米国)ら男女合わせて現在240人。錦織のコーチを務めるマイケル・チャン氏も08年に選ばれた。日本からは、国際テニス連盟の副会長を8年間務めた故川廷栄一氏が「黄金の業績賞」を受賞したものの、殿堂入りはまだいない。

 NHK総合は9日午後1時5分から急きょ録画中継を行うことを決めた。日本中が快挙を待つが、その瞬間は、またこれまで欧米勢中心に回ってきたテニス界が新たな時代に突入することを意味する。功績を称えられるのはまだ先だろうが、錦織が勝った時、名実ともにレジェンドと肩を並べることになる。

 ≪最多はバレー≫スポーツの「殿堂」で最も日本人が多いのはバレーボール殿堂で監督部門に故松平康隆氏ら3人、インドア選手部門で大古誠司氏ら男女4人が選出されている。世界ゴルフ殿堂に選ばれた日本人は青木功、尾崎将司、岡本綾子(国際投票部門)と樋口久子(生涯業績部門)の4人。また国際ボクシングの殿堂にはファイティング原田氏を含む3人、世界フィギュア・スケートの殿堂(米コロラド州)は伊藤みどり氏が選手で佐藤信夫氏がコーチで名を連ねている。

続きを表示

この記事のフォト

2014年9月9日のニュース