錦織 Vいける!アジア初4大大会決勝 世界1位ジョコに完勝

[ 2014年9月8日 05:30 ]

決勝進出を決めて喜ぶ錦織に、スタンドも立ち上がって拍手喝采(AP)

テニス全米オープン第13日男子シングルス準決勝 

(9月6日 ニューヨーク ビリー・ジーン・キング・ナショナル・テニスセンター)
 夢のグランドスラム制覇まであと一つ!男子シングルス準決勝で第10シードの錦織圭(24=日清食品)は、世界ランク1位のノバク・ジョコビッチ(27=セルビア)を6―4、1―6、7―6、6―3で撃破。4大大会シングルスで日本勢初の決勝進出を果たし、第14シードのマリン・チリッチ(25=クロアチア)と互いに初優勝を懸け、激突する。決勝は8日午後5時(日本時間9日午前6時)から行われる。

 「Nishikori!!」

 「Go!Kei」

 米国のファンが口々に叫ぶ。コート上の気温は35度を超え、センターコートに充満した熱気は、アップセットを期待する熱狂へと変わっていた。

 渦巻く興奮が解き放たれたのは、第4セットの第9ゲーム。ジョコビッチのサービスゲームで迎えた2本目のマッチポイント。14本のラリーは最初は互角、徐々に形勢は錦織に傾いた。最後はジョコビッチのフォアハンドがベースラインを越えて「アウト!」のコール。錦織はラケットを放り出し、両手を広げた。

 「何が起こっているか分からない」。自身初、日本初、アジア初の4大大会決勝進出。8度目の4大大会制覇を狙う世界1位を打ち負かし、前人未到の舞台にたどり着いた瞬間だった。

 2戦続けて4時間を超えた4回戦、準々決勝と比べ、試合時間は2時間52分にとどまった。しかし、湿度の高い炎天下では厳しい消耗戦。先に音を上げたのはジョコビッチだった。「きょうも疲れはあった。でもジョコビッチの方が疲れて見えた」という錦織は「自分でもおかしいんじゃないかと思う」とあきれるタフネスぶりを見せつけた。

 今季は大会中もトレーニングをこなしながら常に体力を向上させてきた。右足親指の手術をした後も、球は打てなくともエアロバイクをこぐなどジム練習は継続。おかげでぶっつけ本番の今大会も動きは鈍っていない。

 特に第3セットからはギアを入れ替えた。「もっとポイントを早く終わらせるように自分から打っていった。もっとボールをしばいていった」。速いテンポで右へ、左へと展開し、コートのあらゆる場所から決定打を放った。そのテンポの速さにジョコビッチもついていけなくなった。第3セットをタイブレークで競り勝つと、最終セットは錦織の独壇場だった。

 わずか13歳で親元を離れて海を渡り、言葉もしゃべれずに悪戦苦闘した米国の地。18歳でツアー初優勝した後も度重なるケガがあった。「圭はいい選手だが、もろい、虚弱だとみんなが言っていた。それが一体どうしたんだ?」と海外メディアが質問するように定着したイメージだった。しかし、今大会はその先入観を完全に吹き飛ばした。

 「日本でも大きなニュースになっていればいい。日本は午前4時ごろだけど、たくさんの人が見ているとうれしい」とコート上のインタビューで答えた。だが日本だけではなかった。観客席には元NBA選手のマイケル・ジョーダン氏がいた。俳優のブルース・ウィリスら米国のセレブもいた。ニューヨークのツイッターでは「♯nishikori」がトレンドワード(話題のキーワード)に浮上。世界の流行の発信地から、その戦いぶりを称える声は世界中に拡散した。

 「強い選手を倒して自信もついてきた。このまま調子を落とさなければ絶対にいける」

 全てのテニス選手が憧れる4大大会制覇まであと1勝。チリッチとの決勝戦。日本の24歳が快挙を成し遂げる瞬間を世界中が見つめている。

 ▽4大大会(グランドスラム) 全豪オープン、全仏オープン、ウィンブルドン、全米オープンを世界4大大会とし男子のATPツアー、女子のWTAツアーの頂点とされる。ATPワールドツアーはグレード別に分けられた大会が毎週世界各地で開催され、選手は試合に出場してポイントを稼ぐことで、よりグレードの高い大会への出場権を得る。下からATPワールドツアー250、500、マスターズ1000、4大大会となっており、ツアーに出場できるポイントを持たない選手は、さらに下のチャレンジャー・シリーズやフューチャーズ・シリーズで得点を稼ぐ。

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