奨菊「ヨシッ!」速攻一撃 2敗対決、高安を一蹴

[ 2014年7月27日 05:30 ]

高安(左)との2敗対決を制した琴奨菊、カド番から一転、初の賜杯も見えてきた

大相撲名古屋場所14日目

(7月26日 愛知県体育館)
 気合の速攻だ。大関・琴奨菊が平幕・高安を一気に寄り切って2敗を守り、横綱・白鵬と優勝争いのトップ並走で千秋楽に臨む。自身の初優勝、そして8年半ぶりの国内出身力士Vに向け、大関昇進の可能性も出てきた関脇・豪栄道との大一番を迎える。

 日を追うごとに鋭さを増す速攻相撲で琴奨菊が圧倒した。一度はつっかけられても「しっかり自分の相撲を取るだけ」と動じない。踏み込んで左差し。すぐにかいなを返して、相手の右腕をはね上げた。得意のがぶり寄りで場内の大歓声を浴びた。懸賞を受け取る際は「ヨシッ!」と気合の言葉も出た。北の湖理事長(元横綱)は「今場所で一番いい相撲。立ち合いの一瞬で勝負を決めた」と手放しの褒めようだ。

 花道を引き揚げ、緊張感から解放された本人が目を糸のように細くしたのは当然だった。「緊張するなと言われても、緊張する。それを受け入れている。失うものは何もないし、体がちぎれてもいいと思っている」。2敗を守り、白鵬と優勝争いトップを並走して千秋楽を迎える。

 「場所前にここまで来るとは思わなかった」。昨年九州場所で負った右大胸筋断裂の大ケガは完全回復しないまま。苦戦も予想されたカド番場所を前に周囲が限界をささやく声も耳にした。だが、「それを聞いて怖がって相撲を取るのをやめた」と腹をくくった。

 師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は「ケガがいい勉強になったのかも」と目を細める。先代の佐渡ケ嶽親方(元横綱・琴桜)は「ケガは稽古で治せ!」と口酸っぱく言い続けた。部屋伝統の教えに従い、6月は四股など基本運動に時間を割き、場所前は出稽古も敢行。ピンチを成長のチャンスに変えた。現師匠は弟子の奮闘を認め、約8キロのタイを仕入れて、初優勝の準備に着手した。出身の福岡県柳川市も優勝の期待に大興奮だ。緊急開催されたパブリックビューイングに金子健次市長をはじめ約100人が集結、万歳を唱えた。

 千秋楽は大関昇進が懸かる豪栄道との対戦。互いに相撲人生の大きな節目となり得る大一番。「(自身の)大関獲りの時より今の方がメッチャ落ち着いている」。大関在位17場所目。経験のすべてを懸けて初めての賜杯を、そして栃東以来、8年半ぶりの国産力士Vを目指す。

続きを表示

2014年7月27日のニュース