旭大星 化粧まわしに“星になった母” 最愛の人と共に戦う

[ 2014年5月31日 09:31 ]

旭川空港で旭川のゆるキャラ「あさっぴー」と記念撮影する旭大星

 西幕下3枚目で迎えた大相撲夏場所で5勝2敗の成績を収め、名古屋場所(7月13日初日、愛知県体育館)での新十両昇進が決まった旭大星(24=友綱部屋)が30日、故郷の北海道旭川市に凱旋した。かつての相撲王国で横綱8人を生んだ北海道から関取が誕生するのは、01年九州場所の若天狼以来13年ぶり。久々の道産子関取誕生の裏には、11年前に亡くなった母・大串真由美さん(享年37)との固い絆があった。

 午前9時半、旭川空港に到着した旭大星が真っ先に向かったのは11年前に37歳の若さでがんのため死去した母・真由美さんの遺骨がある寺院だった。納骨壇の扉を開け、力士姿の自らの写真と母が大好きだった缶コーヒーをお供え。そして線香をたいて目を閉じ、約30秒間手を合わせた。

 「母さん、関取として帰ってくることができました。ありがとう」

 生前時の母はしつけに厳しく、やんちゃだった旭大星は「24時間ずっと叱られていた」と振り返る。「凄い優しいわけでもなく、凄い料理がうまいわけでもない。でも、凄い大好きだった」。母が亡くなったのは中学2年の時。心の支えを失った少年は、ひたすら柔道に打ち込むしかなかった。抜群の運動神経を生かし、高校時には81キロ級で北海道王者にもなったが、何か物足りなさを感じていた。

 そんな時、父・浩さん(49)の知人で、旭川大島部屋後援会会長だった会社経営者・島田安教さん(70)の橋渡しにより、角界入門が決まった。「星になった母」への思いが込められた“旭大星”のしこ名で08年初場所に初土俵。序二段時に「遊びたい」と一度は旭川に逃げ帰ったが、亡くなった母の顔が浮かび2週間で思い直した。

 入門から6年半で道産子力士13年ぶりの関取に昇進。亡き母への報告後には島田さんの元に向かい、化粧まわしの贈呈が決定した。旭川のゆるキャラ「あさっぴー」とともに亡き母を示す星が描かれたデザインとなっている。幕内に昇進すれば、個人後援会も設立予定。「北海道の星になれるように頑張ります」。星となった母が、天から優しく見守っている。そう信じているからこそ、さらなる高みに向けて辛抱する。

 ◆旭大星 託也(きょくたいせい・たくや=本名・大串拓也)1989年(平元)10月18日、北海道旭川市出身の24歳。柔道特待生として旭川大高に進学し、柔道部エースとして活躍。08年初場所に大島部屋から初土俵。12年4月に師匠の大島親方(元大関・旭国)の定年に伴い、友綱部屋へ転籍。得意は食い下がり、押し、出し投げ。1メートル84、127キロ。

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