21歳王子谷が初V 大外刈りさく裂!東海大勢11年ぶり栄冠

[ 2014年4月30日 05:30 ]

決勝で上川大樹(下)に大外刈りで一本勝ちした王子谷剛志

柔道全日本選手権

(4月29日 日本武道館)
 伏兵の王子谷剛志(21=東海大)が得意の大外刈りをさく裂させて大会初優勝を飾った。準々決勝では同い年で昨年準Vの原沢久喜(21=日大)、決勝では上川大樹(24=京葉ガス)をいずれも大外刈りで撃破した。東海大勢としては03年の井上康生(現全日本男子監督)以来11年ぶりの全日本制覇。大会後の強化委員会で決まった8月の世界選手権代表からは外れたものの、最重量級を担う新たなタレントが台頭した。

 新王者の恩師でもある東海大相模高監督の林田和孝氏は王子谷をこう評する。「彼はうさぎではなく亀。ゆっくりやっていけばいい」。決勝の上川戦でも、王子谷はゆっくり、焦らずにチャンスを待っていた。

 準決勝の伏線もあった。王子谷は81キロ級の永瀬を52秒で下したが、上川は100キロ超級の相手と5分以上の激闘を戦っていた。「前半で勝負にいくと返し技がある。疲れたところに一撃を食らわせる」。勝負に出たのは残り2分を切ってから。右足を飛ばし、全身に力を込めると、上川の156キロの巨体は音を立てて畳に沈んだ。

 シャイな性格で不器用なタイプ。小1で柔道を始めた時には受け身がうまくできず、布団の上で何度も前回り受け身の練習を繰り返したという。地道な歩みは当時からのものだった。全国初制覇も高3になってから。昨年のこの大会は同い年の原沢が準優勝。ライバルに一歩先んじられて悔しさを味わった。しかし“亀の歩み”は止めなかった。昨年12月に東海大の主将に就任。責任感が増し、稽古への取り組みも一層厳しくなった。

 そんな王子谷がこだわりを持つのが大外刈りだ。小学生の時の得意技は体格に任せた払い腰。だが林田氏の助言がそれを変えた。「それでは世界に通用しない。返されてもいいから、これから6年間は大外刈りを磨きなさい」。中高6年間で愚直に磨き上げた武器は、日本一を決める舞台で最高の輝きを放った。

 憧れの井上康生監督以来となる全日本のタイトルを東海大にもたらした。「井上先生は3回、山下先生は9連覇。自分はまだ1回だけど誇りに思っている」。21歳での全日本制覇はむしろ早いぐらいだ。世界選手権代表には選ばれなかったが、王子谷にとって大きな一歩となる優勝だった。

 ◆王子谷 剛志(おうじたに・たけし)1992年(平4)6月9日、大阪府泉佐野市生まれの21歳。警察官の父・高次さんの影響で6歳から柔道を始める。小学校では府大会2位、中学では全国3位が最高成績。東海大相模高3年時に高校総体、全日本ジュニア、世界ジュニアで優勝。世界ジュニアは翌年も連覇した。今年の選抜体重別は準決勝で七戸に敗れて3位。趣味は読書。1メートル86、137キロ。右組み。

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