運命の日に初土俵 石巻出身の鈴木「死んでいたかも」

[ 2014年3月11日 10:59 ]

春場所の前相撲で初土俵を踏む、宮城県石巻市出身の鈴木章史君(左)

 被災地出身の15歳の少年が運命の日に新たな人生へと歩みだした。大阪市ボディメーカーコロシアムで開催中の大相撲春場所で11日朝、宮城県石巻市出身の鈴木章史(玉ノ井部屋)が今場所の新弟子たちによる前相撲で初土俵を踏んだ。

 1メートル66、102キロの丸い体で思い切りぶつかり、アマチュア相撲の経験者に寄り切られて黒星だったが「力士として前を向いて生きていく」と出世を誓った。

 東日本大震災が起きた3年前、石巻市立釜小6年だった鈴木は教室にいた。地震発生後すぐに歩道橋へ避難して助かったが、同じクラスの男の子は車の中で津波にのみ込まれた。自宅は流され、両親や5人のきょうだいは今も同市の仮設住宅2戸で生活する。

 桃生中1年の夏、炊き出しで石巻市に来た玉ノ井部屋の関係者から勧誘された。柔道少年だった鈴木は「家族のために頑張りたい」と入門を決意。角界での厳しい修行が始まった。

 8日には着物にげたを履き、中学の卒業式に出席した。来場所から番付にしこ名が載る。「自分は死んでいたかもしれない。きょうは亡くなった友人や宮城県の方々のために気持ちを込めて黙とうをささげたい」と故郷に思いをはせた。

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2014年3月11日のニュース