パナソニック4年ぶりVで初2冠!ラスト国立飾った

[ 2014年3月10日 05:30 ]

胴上げされる中嶋監督を背に喜ぶパナソニックフィフティーン

ラグビー日本選手権決勝 パナソニック30―21東芝

(3月9日 国立)
 現国立競技場では最後の決勝が行われ、トップリーグ王者のパナソニックが東芝(トップリーグ3位)を30―21で下し、4季ぶり4度目の頂点をつかんだ。南半球の世界最高峰リーグ「スーパーラグビー(SR)」でもプレーするSH田中史朗(29)が、4日に一時帰国して先発出場。今季加入したオーストラリア代表キャップ51のSOベリック・バーンズ(27)との息の合ったハーフ団で後半は試合を支配し、チームに初の2冠をもたらした。

 ノーサイドの瞬間、1人だけグラウンドに背を向け、国立のトラックを横切る選手がいた。後半37分に途中交代した田中だ。名勝負が繰り広げられた地に感慨を抱いている時間はない。試合終了からわずか2時間30分後の、午後6時25分のオークランド行きで当地へ戻る強行軍。カジュアルな服装に着替えると表彰式に参加した後は空港行きのハイヤーに飛び乗る前に、喜びの声を発した。

 「帰ってきたかいがありました。たくさんの方に応援していただいたし最高です。ヒヤヒヤする場面もあったけど、今までやってきたことを(意思を)統一してできた」。社会人と大学の全国大会優勝チーム同士の熱戦。神戸製鋼の7連覇…。国内ラグビー人気を支えてきた舞台で海外へ飛び出した29歳が躍動した。

 すでにシーズンが始まったSRだが、所属するハイランダーズは今週試合なし。出場機会を求める田中とチームの思惑が一致し、4日に帰国した。同じくSRでプレーする堀江主将を欠く中でベストの布陣。しかし前半は、東芝の激しい圧力に遭い4点のリードを許した。相手が1人少ない時間帯でも得点できなかった。

 ただ、それで焦らないのが王者の強さ。そして、田中の進化だ。後半、田中は球出しのテンポをアップ。相手ディフェンスがそろう前に攻撃を仕掛け、防御網を崩した。同6分、SOバーンズのラインブレークからCTB林が逆転トライ。6点リードの同34分には、東芝SH小川のスクラムからの球出しを田中が早い飛び出しで阻止。反則を誘うと、バーンズが約48メートルのPGを沈めて9点差にした。田中が「チームの伝統です」と誇った防御で勝利を決定付けた。

 昨季はトップリーグの終盤にSRに挑戦する堀江と田中が離脱。戦力ダウンしたチームは無冠に終わった。デメリットは大きかったが、今季はチーム内の競争が増し、世界最高レベルのラグビーでプレーする2人が経験を還元したことで、チームに相乗効果が出た。

 過去3度の日本選手権制覇はいずれも秩父宮で達成。現国立で最初で最後の日本一となった。海外からの風も取り入れたパナソニック。「今度は追われる立場。来季は強みを伸ばしていかないと」と中嶋監督。ラスト国立からこの日、新時代への幕が開けた。

 ▽スーパーラグビー 96年にオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカの南半球3カ国の12チームが参戦し「スーパー12」として創設。06年に2チームが新規参入し「スーパー14」に、11年に1チームが参入し「スーパーラグビー」となった。現在は各国に5チームずつ所属。シーズンは2~8月で、レギュラーシーズン16試合の結果により、6チームが決勝トーナメントに進出できる。日本人は田中、堀江のほかに、クボタの立川理道がブランビーズ(オーストラリア)に所属している。

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2014年3月10日のニュース