真央「最高の演技」で恩返し!フリー自己新 万感6位

[ 2014年2月21日 05:40 ]

フリーの演技を終え涙を流す浅田

ソチ五輪フィギュアスケート女子

(2月20日)
 真央、万感のラストダンス――。ショートプログラム(SP)で16位に沈んだ女子の浅田真央(23=中京大)は20日のフリーで自己最高の142・71点をマークし、合計198・22点をマーク。ほぼ完璧な演技で自身最後とする五輪を6位で締めくくった。19日のSPはミスが続き、11―12年シーズン以降最低の55・51点だった。鈴木明子(28=邦和スポーツランド)は合計186・32点で8位。村上佳菜子(19=中京大)は合計170・98点で12位だった。アデリナ・ソトニコワ(17=ロシア)が合計224・59点で金メダルだった。

 こんな浅田をみんなが待っていた。誰よりも、浅田自身が待っていた。冒頭、今大会2度のアタックで転倒していたトリプルアクセルを完璧に成功。今季初めて加点がつく好ジャンプで波に乗ると、ラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」の荘厳な調べと一体に。連続ジャンプで2つの回転不足なんて関係ない。フリーの142・71点は自己ベストだ。フィニッシュと同時に涙があふれた。おえつが漏れる口元を左手で覆った。大歓声に応えると、泣き顔は笑顔に変わった。

 「今まで支えてくれた方々に、最高の演技で恩返しすることができた。最高の演技ができた」

 19日のSPではトリプルアクセルの転倒をはじめ、ジャンプを全て失敗して55・51点でまさかの16位発進。フリー当日の朝の練習でも、ジャンプのミスが目立つなど調子は最悪だった。「まったく体が動かなくて、大丈夫かなって思っていた」。選手村に戻って仮眠し、赤飯を食べて気持ちを落ち着かせた。演技直前の6分間練習でトリプルアクセルに着氷し、「吹っ切れたのかな」と自信を取り戻した。

 昨年11月末に痛めた腰も年明けには回復。腰に負担のかかるスピンの練習もこなし、体調に不安はなかった。だが、団体から個人戦SPの間に行った、アルメニアの首都エレバンでの合宿でトラブルに見舞われた。エレバンのリンクの氷面には砂が浮き出し、スケート靴の刃(エッジ)が傷んでしまった。

 また、エレバンは標高約1000メートルの高地。高地は気圧が低く、一般的にジャンプが跳びやすいとされる。一方、同じような標高の長野・野辺山で行う有望新人発掘合宿では、ジャンプの調子を崩す選手がいるという。個人戦SPでのジャンプ失敗について「高地での調整が影響した可能性がある」と指摘する関係者もいたが、フリーで奇跡の逆襲劇を見せた。

 11年12月9日、最愛の母・匡子(きょうこ)さんが、肝硬変のため48歳の若さで亡くなった。母と家族がかわした一つの約束。「これからも自分の夢に向かって、やるべきことをしっかりやる」――。涙を汗に変えて練習し、試合に出続けた。病魔と最後まで闘った母との約束を果たし、たどりついた夢舞台。「(次の4年は)想像できません」。魂の五輪ラストダンス。黄金の輝きはもう、ほとんど見えなかった。でも、懸命に舞った。どんなに現実が厳しくても、浅田も最後まで戦った。母がいる天を見上げてフィニッシュした、その瞬間まで。

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