羽生史上初の100点超え!それでも「まだまだできた」

[ 2014年2月15日 05:30 ]

SPの演技を終え、キスアンドクライでこん身のガッツポーズをする羽生(左)

ソチ五輪フィギュアスケート男子SP

(2月13日)
 世界一の19歳だ。13日の男子ショートプログラム(SP)で、羽生結弦(ゆづる、19=ANA)が、自身が保持していた世界最高得点99・84点を更新する101・45点でトップに立った。国際連盟(ISU)公認の大会で史上初めて100点超えを果たした。世界選手権3連覇中のパトリック・チャン(23=カナダ)が97・52点で2位、高橋大輔(27=関大大学院)が86・40点で4位、町田樹(たつき、23=関大)は83・48点で11位だった。

 世界一のスケーターは誰か。その答えをはっきり示すように、羽生が高々と右拳を突き上げてフィニッシュする。荒い呼吸のまま真っすぐに見据えた視線の先には、未知の世界が広がっていた。史上初の100点突破となる、101・45点のスーパースコアに「よっしゃ~!」。圧巻のパフォーマンスを披露した19歳が、輝く汗を拭った。

 「ホントにうれしい。100点超えはあまり考えていなかった。五輪という素晴らしい舞台で、100点を超えてうれしかった」。6日の団体男子SPでも97・98点の高得点で首位。ただ、チームメートの存在が心強い団体と、全てが自己責任の個人戦では重圧の種類が違った。「きょうは凄い緊張した。足が震えていた」。振り返れば、すぐそこに五輪に巣くう“魔物”は口を広げて迫っていた。何とか自分を保てたのは、いつものルーティンを守ったからだ。

 演技前、イヤホンをつけた羽生の耳には「BUMP OF CHICKEN」など聞き慣れた日本の楽曲が届いていた。名前がコールされると壁をポンと叩いてからスタート位置へ。いつも通りの作業を終えると、夢のような2分50秒がスタートした。楽曲は2季連続でロックギタリスト、ゲイリー・ムーアの「パリの散歩道」。五輪シーズンに新曲を用意することも考えたが、しっくりくる音楽はなかった。そこで「もっと磨くことができる。100点を目指せる」と切り替えた。過去3度、世界最高を更新した自信のプログラムが羽生を後押しした。

 4回転トーループは9人中7人のジャッジが、出来栄え評価で3点満点を加算するスーパージャンプ。トリプルアクセル、3―3回転も完璧に成功だ。表現力を示す5項目の演技点も全て9点台。ただ、スピンの1つは最高難度レベル4を獲得できなかった。「まだまだできたところもある」。求めるレベルが高いからこそ、全身で満足感に浸ることはできなかった。

 1つの時代の終えんが新時代の幕開けを告げる。五輪を目指すきっかけをくれたプルシェンコが古傷の腰を痛めて棄権し、引退を表明した。「金メダルの可能性が一番あるのは羽生さ」と話していたロシアの皇帝。滑る組が違ったため、羽生は自身の演技後に事実を知った。「残念。彼の演技は大好きなんで、ずっと忘れない。今まで感動できる演技を届けてくれて、本当にありがとう」。気高い皇帝魂は、この日19歳に受け継がれた。

 宮城県仙台市出身。東日本大震災の被災地の希望も背負って夢のリンクに立つ。昨年のGPファイナル前の12月4日。震災から1000日が経過し、「そっか、もう1000日なんですね」としみじみ語った。ファイナルで世界王者チャンに圧勝し、ソチでの好演技を予感させた。忘れもしない11年3月11日からもうすぐ3年。あの時、16歳だった少年は強くなった。世界の誰にも負けないくらいに――。

続きを表示

2014年2月15日のニュース