角野「金以上の価値」8位 「子供の遊び」に反骨お辞儀ポーズ

[ 2014年2月9日 05:30 ]

決勝の2本目を滑り終えた角野は両手を広げて天を仰ぐ

ソチ五輪 スノーボード男子スロープスタイル

(2月8日 ロザフータル公園)
 スノーボードの新種目、男子スロープスタイル準決勝と決勝が8日に行われ、角野友基(17=日産X―TRAIL)が8位入賞を果たした。準決勝を通過ラインぎりぎりの4位で通過すると、決勝では2回目に75・75点をマーク。今大会最初の決勝種目での日本人メダル1号はならなかったが、17歳の高校生がソチの大空で躍動した。

 スノーボードを始めたのはなぜだったろうか。大きな重圧、さまざまな束縛を感じた初めての五輪。最後にその理由をきちんと確かめることができた。8位入賞の結果以上に角野には大事なことだった。

 「不安やストレスがいっぱいあったけど楽しく滑れた。スノーボードはもともと楽しいスポーツだから」

 6日の予選とは見違えるようだった。スタートラインに立って、最初に見せたのはコーチらとそろいのお辞儀ポーズ。予選を終えた後、海外の選手から「次は日本をプレゼンテーションしてくれよ」と言われて考えついたパフォーマンスだった。準決勝から続けるにつれ、横にいた外国人スターターまで一緒に頭を下げ始めた。予選では「ちょっとせかされた」というスタートのリズムを自分のペースに持ち込むと、滑りも勢いを増した。

 持ち味の大きなジャンプをソチの空に描いた。決勝2本目の最後にはバックサイドトリプルコーク1440(軸をずらしながらの4回転)の着地も決めた。「何も悔やんでいない。全部やりきった」結果が8位。前日には一部報道でスロープスタイルを「子供の遊び」と言われたことに「ちょっとムカついた」。「だったらスポーツマンシップにのっとって礼に始まり礼で終わってやる」。お辞儀にはそんな反骨の意味も込められていた。

 全てはスノーボードを愛すればこそだ。8歳のころ父親に連れられて行った兵庫県内の人工スキー場でスノーボードに出合った。自らをテンションが高いという少年は小学3、4年でクラスで浮く存在になり、「毎日スリッパを隠されたり、友達がいなかった」。スノーボードだけが生きがいだった。学校が終わると1時間以上かけて神戸市の練習施設「神戸キングス」に通い、大人に交じって飛び続けた。

 兄貴分のプロスノーボーダー、岡本圭司さん(31)は角野の思いをよく知っている。「友基はスノーボードに人生を救われたから、昔の自分みたいにやりたいことが分からない人にスノーボードを知ってほしい、人生が楽しいことを伝えたいと思っている」。そのためには嫌なこともいとわない。つらいトレーニングに励み、拘束を嫌がりながらも全日本合宿に参加した。「幸せなものを手に入れるためには我慢しなきゃいけないものもある」。それもスノーボードで出会った大人たちに教わったことだ。

 決勝を滑りきった角野は「今の僕にはこの入賞は金メダル以上の価値がある。僕は精いっぱい伝えた。あとはそれを受け取ってもらうだけ」と語った。「世界一になったとしてもスノーボードをメジャーにできなかったら夢はかなっていない」。初出場でメダルには届かなかった。だが、その滑りを見た誰かがスノーボードの魅力に気づいたのだとしたら、17歳の抱く夢は一歩実現に近づいた。

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