沙羅 コケてもV 飛びすぎ尻もち滑走「怖かったです」

[ 2014年1月19日 05:30 ]

新しくなった蔵王のジャンプ台で104メートルの大ジャンプを見せ、優勝した高梨

ノルディックスキーW杯ジャンプ女子個人第8戦

(1月18日 山形市蔵王=HS100メートル、K点90メートル)
 高梨沙羅(17=クラレ)が転んでも優勝した。1回目に強い向かい風を受けてヒルサイズを越える104メートルの大ジャンプ。あまりの飛距離に着地を決められず、仰向けになるほどの危険なジャンプとなった。それでも110・8点でトップに立ち強風のために2回目が途中で打ちきりとなって3連勝。男子の葛西紀明(41=土屋ホーム)と並んでジャンプの日本勢最多となるW杯通算16勝目を挙げた。伊藤有希(19=土屋ホーム)が96・5メートルで自己最高2位。日本勢ワンツーとなった。

 より遠くに飛び、足を前後に開くテレマーク姿勢をガチッと決める。普通ならそれが勝者の姿だ。しかし、この日の高梨はまるで違った。着地後に尻もちをついてのけ反り、仰向けで滑走。どうにか起き上がるとランディングバーンのフェンスぎりぎりで停止した。

 距離は104メートル。喜ぶよりも「怖かったです」というのが本音だった。競技は強風で断続的に中断。高梨も一度仕切り直した後に他の選手よりも下げたゲートからスタートした。しかし、どの選手よりも強い向かい風が吹いたことで、制御不可能なほどに飛距離が伸びた。

 ヒルサイズを越えれば選手は着地で地面が迫り来る感覚になる。衝撃も大きく、ケガの危険と隣り合わせ。高梨のように飛距離の出る選手ならなおさらだ。全日本の小川孝博チーフコーチも「100メートルぐらいで安全に着地できると思っていた。スタートした後に別の風が入ってきてヒヤッとした」と振り返った危機一髪のジャンプだった。

 高梨自身は「自分の技術不足」と反省したが、コーチでもある父・寛也さんは「あそこまで飛んだら立てない。後頭部をぶつけてはいないけど飛び終わった後は脳振とう気味で少しクラクラしていた」と語った。会場には5000人以上が詰めかけ、警察によって入場制限がかけられるほど。大観衆の前でケガがなかったのが幸いだった。

 当然のことながら5人の審査員による飛型点(20点満点)は大幅に減点されて11・5点と12点が並んだ。派手に転倒したフィンランドの選手の次に悪い47人中46位の35点。しかし、その分を圧倒的な飛距離点とゲートを下げた加点で穴埋めし、合計点は1位。強風のために2回目が途中で打ち切られても、高梨の優勝だけは誰も文句のつけようがなかった。

 蔵王のジャンプ台は今季から日本で唯一、国際スキー連盟の新ルールに適合した新形状に改築された。ソチ五輪と同じ仕様となった新しい台への対応も問題のないことを示した。転んでも勝つ。高梨の強さはついにここまできた。

 ▽クロソイド曲線 カーブの半径が徐々に変わっていく曲線のこと。高速道路のランプなどで用いられ、運転者は変化する曲率に合わせ一定の速度でハンドルを切ったり戻すことになるため、急激なハンドル操作を避けられる。

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