稀勢 薄氷の初日…審判部長ら苦言も「集中していくだけ」

[ 2014年1月14日 05:30 ]

妙義龍をすくい投げで破った稀勢の里

大相撲初場所2日目

(1月13日 東京・両国国技館)
 綱獲りに挑む大関・稀勢の里は小結・妙義龍の突き押しに苦戦しながらも、すくい投げで初日を出し連敗を回避した。綱獲りの大関が初日から2連敗で横綱に昇進したケースはなく、崖っ縁で踏みとどまった格好だ。横綱・白鵬は連勝で幕内707勝目。外国出身力士として武蔵丸(現武蔵川親方)を抜き、単独1位となった。カド番の大関・琴奨菊は平幕・隠岐の海に敗れて、早くも土がついた。

 完敗した初日の光景が一瞬、ファンの脳裏をよぎったに違いない。満員御礼の館内から悲鳴が上がる。稀勢の里は踏み込みが弱く、腰高のまま妙義龍の当たりをまともに受けた。右を絞られ、左半身の苦しい体勢。それでも相手の攻めを2度こらえ、土俵際で入った左からのすくい投げで逆転勝ちした。

 「(立ち合いは)悪くないと思ったけど、相手にそれ以上のものがあった。見た人が一番分かるでしょう」と取り口について多くを語らなかったが、攻め込まれた場面については「我慢です」と振り返った。

 綱獲り場所で初日から連敗して成功した者はいない。この日負ければ過去のデータ上、綱獲り確率は0%になるところだった。横綱へ可能性を残した大きな白星だが、理事長職を代行している九重事業部長(元横綱・千代の富士)は「まわしを取れないし、攻められっぱなし」と指摘。鏡山審判部長(元関脇・多賀竜)も「腰が高い。力を誇示してくれないと、先行きしんどい。頑張ってもらわないと」と苦言を呈した。

 テレビ観戦した父・萩原貞彦さんも「落ち着こうとして、逆にもっと緊張している。もっと思い切り緊張した方がいい」と心配げに話した。

 部屋が千葉県松戸市から東京都墨田区に移り、それまで片道約1時間の車での移動が約5分とグンと近くなった。便利にはなったものの、その一方で頭の中を整理する時間はほとんどなくなった。場所前から「あの時間が好きだった。近くなるとどうかな」と話していたが、それを言い訳にするわけにはいかない。綱獲り場所はまだ始まったばかりだ。「最後まで集中していくだけ。前に出る相撲が自分の相撲だと思う」と何度も苦い経験をしてきた挑戦者は、自分に言い聞かせるように話した。

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2014年1月14日のニュース