葛西 41歳7カ月最年長V「ベリーベリーベリーハッピー」

[ 2014年1月12日 05:30 ]

ジャンプ個人第13戦でW杯史上最年長となる優勝を果たし、表彰式で笑顔の葛西紀明(中央)

ノルディックスキーW杯ジャンプ個人第13戦

(1月11日 オーストリア・バートミッテルンドルフ=HS200メートル、K点185メートル)
 ジャンプ界に新たな伝説が刻まれた。冬季五輪史上最多となる7度目の代表に決まっている葛西紀明(土屋ホーム)が、41歳7カ月のW杯最年長優勝を成し遂げた。1回目に196メートルを飛んでトップに立つと、2回目も197メートルで合計391・6点。04年2月のパークシティ大会(米国)以来10シーズンぶりの優勝を飾り、岡部孝信が持っていた38歳4カ月の最年長記録を更新した。船木和喜と並んでいた日本人のジャンプW杯通算勝利数も16勝で単独最多となった。

 その偉業を称えるのに敵も味方もなかった。何度も右拳を握り締めて喜ぶ葛西の元に、他国のライバルたちが次々と駆け寄ってお辞儀をした。数え切れないほどのオーストリア国旗もはためいて祝福。その中に日の丸を見つけ、葛西は万感の思いをかみしめた。

 テレビインタビューでは「ベリーベリーベリーハッピー」と答えた。きっと「ベリー」を何回繰り返しても足りなかったに違いない。そして「またあした(第14戦)も勝ちたい」と長い現役生活を支えてきた飽くなき闘争心ものぞかせた。

 着地を決めた瞬間には、コーチボックスでも他国のコーチ陣が派手にバンザイをしていた。「昔一緒に戦っていた仲間がコーチになっていたり、みんな葛西を応援してくれている」。日本の横川朝治ヘッドコーチが語っていたように、誰もが我が事のように喜んだW杯最年長優勝だった。

 葛西が初参戦したのは、まだバブル時代の80年代のことだった。89年12月のサンダーベイ大会(カナダ)から25年、積み上げてきた試合数は439試合に上る。誰よりも多く出場し、今なお最前線で戦っているからこそ、各国で「レジェンド」と呼ばれて尊敬される。ラージヒルよりも大きく、ヒルサイズ185メートルを超えるフライングヒルでの戦い。恐怖心を感じさせることなく、若干の追い風の中で196メートル、197メートルとハイレベルなジャンプをそろえた。

 昨年8月のグランプリ白馬大会で同シリーズの最年長優勝を達成。冬シーズンも開幕から1桁順位を重ね、12月の個人第6戦で最年長表彰台をマークした。かつてない好調のシーズンで、とうとうつかんだ表彰台のど真ん中だった。

 冬季五輪史上最多となる7度目の五輪もあと1カ月に迫っている。国際オリンピック委員会(IOC)の公式サイトでも特集記事が組まれ、現役続行にこだわり、世界中のファンに恩返ししようとする姿勢を称賛。その中で葛西は国際舞台で戦い続ける理由を「まだ五輪で金メダルを獲っていないから」と答えている。

 「今季は調子がいいし、(金メダルに)手の届きそうなところまで来た」。日本のメダル候補は高梨沙羅だけではない。不死鳥のごとき41歳を忘れてはいけない。

 ◆葛西 紀明(かさい・のりあき)1972年(昭47)6月6日、北海道下川町出身の41歳。94年リレハンメル冬季五輪団体銀メダル。世界選手権では通算6個のメダルを獲得。ソチ五輪で7大会連続となる代表入りを果たした。北海道・東海大四高出、土屋ホーム。1メートル77、62キロ。

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