兄弟パワーだ東洋復路もV 設楽ツインズに続き服部兄弟も

[ 2014年1月4日 05:30 ]

東洋大・7区服部弾馬は区間1位でタスキを繋ぐ

第90回箱根駅伝

(1月3日 箱根・芦ノ湖~東京・大手町、復路5区間109・9キロ)
 新黄金期到来の予感――。往路を制した東洋大は復路でも安定感抜群の走りを見せ、2位駒大に4分34秒の大差をつけ2年ぶり4度目の総合優勝を果たした。箱根デビューとなった服部弾馬(はずま、1年)が7区で区間賞の快走を見せるなど5区間中3区間で区間賞を奪い、5時間25分38秒の復路新記録もマーク。エース格だった設楽啓太、悠太(4年)のツインズは卒業するが、花の2区で区間3位の兄・勇馬(2年)とそろった服部ブラザーズは来年も健在で、新たな「鉄紺伝説」が始まった。

 左手の甲に黒いサインペンで書いた文字を指さし、続けてユニホームの胸の文字を右手でつかんだ。東洋大のアンカー・大津の手に書いてあったのはスローガン「その1秒をけずりだせ」――。ゴールテープを切ると、鉄紺の歓喜の輪ができた。東洋大、復路新記録で2年ぶりの完全V。3度宙に舞った酒井俊幸監督は「全員が想定通り走ってくれた。闘争心あふれる走りを誇りに思う」と選手を見つめた。

 駒大と59秒差の復路スタート。6区の日下が1分17秒差まで広げると、優勝を決定づける走りを見せたのが7区の1年生、服部弾馬だ。前日の2区で区間3位の兄・勇馬に書いてもらった「その1秒をけずりだせ」の左腕の文字を見ながらの快走で、追ってくる駒大の西山に37秒差をつけた区間賞。全国高校駅伝でも昨年11月の上尾ハーフでも敗れたライバルに初勝利し「ずっと勝てなかったので、倍返しでした」と無邪気に笑った。

 兄のあとを追って、東洋大に入学。しかし待っていたのは、壁だった。30キロ走では何度も嘔吐(おうと)した。大学駅伝初体験となった昨年10月の出雲では2区7位。11月の全日本のメンバーから漏れ、どん底も味わった。そんなとき、兄は「長い距離を走るのはピッチ走法がいい」とアドバイス。フォーム改造も、この日の結果につながった。

 兄が快走を見せた前夜、電話で「右のアキレス腱が痛い」と告白。「(疲労骨折して棄権となった山梨学院大の)オムワンバを見たから、そうなるんじゃないかと」という兄は一睡もできず、朝6時には母・麻理子さん(43)に「心配だ」と連絡した。だが、走り始めれば関係なし。中継所で安どの涙を流した兄を見て「何で泣いてるんだろう、と思った」という奔放な性格も、怖いもの知らずの弟の魅力だった。

 大みそか。「来年は午(うま)年。名前に馬がついている俺たちが活躍しなきゃ」と誓い合ったという兄弟が有言実行でV奪回に貢献した。設楽兄弟は卒業するが、2人の“駿馬”にはまだ先がある。「3年生の先輩も残るけど、服部兄弟がエース級の活躍をしないと」と早くも次を見据えた弟に、「あいつがエース区間(2区)を走るなら、譲ります」と苦笑いした兄。駒大3冠の夢を打ち砕いたブラザーズが目指すのは、来季の3冠倍返しという野望に違いない。

 ◆服部 弾馬(はっとり・はずま)1995年(平7)2月7日、新潟県十日町市出身の18歳。東日本大震災の影響で、12年に宮城・仙台育英高から愛知・豊川高に転校。全国高校駅伝は1区2位で、初優勝に貢献。1万メートルの自己ベストは30分7秒79だが、ハーフでは1時間2分54秒。1メートル75、58キロ。

 ◆服部 勇馬(はっとり・ゆうま)1993年(平5)11月13日、新潟県十日町市出身の20歳。宮城・仙台育英高から東洋大に進学し、昨年の出雲駅伝は5区で区間新記録をマークした。全日本では2区区間4位。1万メートルの自己ベスト28分22秒43は、日本人の2年生では最速。1メートル76、60キロ。

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