ママ美姫 SPまず合格点!公式戦復帰2位発進

[ 2013年9月27日 06:00 ]

女子SPの演技を終え、手で顔を覆う安藤

フィギュアスケート ネーベルホルン杯第1日

(9月26日 ドイツ・オーベルストドルフ)
 夢舞台へ滑り出しは上々だ。女子ショートプログラム(SP)で開幕し、4月の女児出産を経て14年ソチ五輪を目指す安藤美姫(25=新横浜プリンスク)が、59・79点で2位発進した。ジャンプなどの技術点は30・13点で、国際スケート連盟(ISU)が定める五輪出場に必要な最低技術点(SP20点)を楽々とクリアした。64・69点で首位のエレーナ・ラディオノワ(14=ロシア)を追う27日(日本時間28日)のフリーでも最低技術点(36点)を超えれば、集大成となる五輪出場へ第一関門を突破する。

 金色の衣装に身を包み2分50秒の演技を終えた元女王は、ひたすら安堵(あんど)感に浸っていた。07、11年の世界選手権を制した安藤が、3季ぶりにSP、フリーを滑る公式戦のリンクに復帰。4月の女児出産を経てソチ五輪を目指す25歳は「衣装を着てメークをしてリンクに立つと、どうなるかと思うくらい緊張した。大きなミスなく終われたのは凄く良かった」と涙ながらに語った。

 冒頭の3回転ルッツ―2回転ループはループが回転不足。その後の3回転ループ、ダブルアクセルと着氷してジャンプはまとめたが、スピンの軸は安定せずスピード感も欠いていた。「スピンやスピードはまだまだ」。昨季開幕前に振り付けたSPの「マイ・ウェイ」には、安藤の特別な思いが込められている。衝撃の出産告白など「自分の道をこれからも歩いていく」という姿はまさに“ゴーイング・マイ・ウェイ”だ。

 本来なら立てなかった舞台で、ソチ五輪出場への第一歩をしるした。日本連盟の強化選手から外れている安藤は、11月の東日本選手権の演技内容次第で強化選手への復帰と、五輪出場のための技術点を獲得できる国際大会の派遣が検討されるはずだった。だが、ドイツスケート連盟から今大会に招待され、異例の形で復帰が実現。当初は11月以降にしか国際大会に出場するチャンスはなかったが、生後半年に満たない愛娘もドイツに連れて行きながら、まずSPで五輪出場に必要な最低技術点をクリアした。

 27日(日本時間28日)のフリーは、04―05年シーズンでも使用していた「火の鳥」だ。SPの2分50秒は何とかこなしたが、演技時間が4分になるフリーではスタミナに大きな不安がある。フリーでISUが設定した最低技術点は36点。「五輪を考えるとフリーでも最低技術点をクリアできたら、半歩でも一歩でも進めたことになる。滑りきれるか分からないけど頑張ります」。母での出場を狙う夢舞台へ、第一関門の突破を見据えた。

 ▼最低技術点 五輪や世界選手権などの大会出場に際して、ISUが最低限のスキルを求める数字で、日本選手にとってハードルは高くない。ネーベルホルン杯はGPシリーズなどよりもランクが下のB級大会だが、この日の出場35選手中、24選手が最低技術点をクリア。フリーの36点も昨年の同大会で22選手中15選手がクリアしている。女子SPは3つのジャンプ、3つのスピン、ステップの計7要素、フリーは7つのジャンプ、3つのスピン、ステップ、コレオグラフィックシークエンスの計12要素。それぞれに基礎点があり、出来栄えに応じて加点、減点がある。

 ◆ソチ五輪への道 日本女子の出場枠は3。12月の全日本選手権(12月21~23日、さいたまスーパーアリーナ)出場と、全日本までにISU公認大会で最低技術点を獲得していることが条件になる。全日本優勝者は代表に決定。2、3位の選手はGPファイナルの日本人最上位メダリストと合わせて選考し、まだ決まらなければ全日本終了時点での世界ランク日本人上位3人、ISU大会のシーズン最高スコア日本人上位3人から選考する。

 ◆美姫復帰までの経過
 ▼11年4月30日 モスクワで開催された世界選手権で、07年に続く2度目の金メダルを獲得。
 ▼12年10月9日 GPシリーズの中国杯、フランス杯にエントリーしていたが、コーチ不在による調整不足で欠場することを発表した。
 ▼13年7月1日 テレビ朝日「報道ステーション」のインタビューで、4月に女児を出産したことを衝撃告白。
 ▼6日 出産告白後、初めてアイスショーに出演。歌手AIとの共演では母への愛を歌った「ママへ」に乗って滑って3回転サルコーで転倒。「アメージンググレース」では3回転サルコーで着氷。
 ▼21日 日本連盟の強化サイドが、11月の東日本選手権で5種類の3回転ジャンプの成否などを基に強化選手への復帰を判断すると発言。
 ▼8月5日 テレビでの出産告白後、初めて報道陣に対して会見。弁護士と警備員を帯同する異例の会見で、女児の父親を公表するつもりがないことや、家族や関係者への過熱取材に対して「失礼はやめていただきたい!」と訴える。
 ▼9月17日 ドイツスケート連盟が、26日開幕のネーベルホルン杯で安藤が復帰すると発表。

続きを表示

この記事のフォト

2013年9月27日のニュース