碧山 日馬に勝った!初金星に涙 亡き田子ノ浦親方にささぐ

[ 2013年9月19日 06:00 ]

日馬富士(手前)を押し出しで破り金星を挙げた碧山

大相撲秋場所4日目

(9月18日 両国国技館)
 ブルガリア出身の碧山(あおいやま)が横綱・日馬富士を押し出しで撃破し、横綱戦5回目の挑戦で初金星を挙げた。昨年2月に先代師匠、田子ノ浦親方(元幕内・久島海、本名・久嶋啓太さん、享年46)の死去で、春日野部屋に転籍。一時は帰国も考えたが、周囲の支えもあって現役を続行。この日、恩返しの勝利を飾った。2敗目を喫した日馬富士は与えた金星が在位6場所で通算9個となり、早くも白鵬(8個)を上回った。4連勝は横綱・白鵬、大関・琴欧洲と旭天鵬、嘉風の4人。

 天国の前師匠にささげる初金星だ。日馬富士の攻めに追い込まれた土俵際。碧山は右からこん身の小手投げを放つと、形勢が逆転した。体が入れ替わり、俵に足をかけたのは横綱。すかさず、両腕を突き出した。日馬富士は土俵下にのけ反りながら転落。座布団が飛ぶ中で、碧山は両腕を軽く下に突き出し、喜びを表現した。

 勝ち名乗りを受ける前から、碧山の青い目から涙がこぼれた。「言葉が出ないくらい凄くうれしい。毎日稽古して、やっといい相撲が取れるようになった。ブルガリアの家族、今の師匠、前の師匠とおかみさんに感謝したい」。インタビューでは流ちょうではない日本語が普段よりもたどたどしくなったが、思いの丈を吐き出した。

 昨年2月13日、入門時の師匠でもある久嶋啓太さんが「虚血性心不全」のため46歳で急逝した。同じブルガリア出身の琴欧洲に勧められて来日してから約5年の間、ずっと親代わりをしてくれた久嶋さんとの突然の別れ。しばらく涙に暮れた。

 母国に帰ることも考えた碧山の支えとなったのは、おかみさんの久嶋綾子さんだった。常に相談に乗り、春日野部屋への移籍を勧めたのも綾子さん。秋場所前も「ケガしないように頑張ってください」と激励された。「何とか頑張らないと」。3場所ぶりの上位で気持ちを新たに臨んだ。

 久嶋さんと同じ和歌山県出身の現師匠・春日野親方(元関脇・栃乃和歌)からは「脇を締めて出ろ。それで負けたら仕方がない」とアドバイス。逆転勝利だったが、師匠の教えは忠実に守った。5日目も結びで白鵬戦。今度は文句を言わせぬ相撲で館内を沸かせる。

 ◆碧山 亘右(あおいやま・こうすけ、本名・ダニエル・イヴァノフ)1986年6月19日、ブルガリア出身の27歳。田子ノ浦部屋に入門し、09年名古屋場所で初土俵。11年名古屋場所で十両に昇進し、同年九州場所で新入幕。12年2月に春日野部屋に転籍し、秋場所では初土俵から所要18場所(史上7位)で小結に昇進した。敢闘賞1回。趣味は映画観賞、釣り。得意は右四つ、寄り。1メートル92、193キロ。

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2013年9月19日のニュース