“電撃”ボルト9秒77金!「“雨に走れば”だった」

[ 2013年8月13日 06:00 ]

男子100メートルで優勝したウサイン・ボルト

世界陸上

(8月11日 モスクワ)
 11日の男子100メートル決勝ではウサイン・ボルト(26=ジャマイカ)が雷雨の中、9秒77をマークして優勝。2位ジャスティン・ガトリン(31=米国)に100分の8秒差をつけ、フライングによる失格となった前回(韓国・大邱)決勝の雪辱を果たした。女子1万メートル決勝では、新谷(にいや)仁美(25=ユニバーサルエンターテインメント)が自己最高の30分56秒70で5位に食い込んだ。この日の男子400メートル障害予選では岸本鷹幸(23=富士通)が49秒96で3位に入り、13日の準決勝に進出した。

 世界一速い男が決まった瞬間、大会ロゴが記されているスタジアム最上部の後方に一筋の光が垂直方向に降下した。空のBOLT(稲妻)と陸のボルトが、これ以上ないタイミングで合体。ゲリラ豪雨をものともせず、残り30メートルでガトリンを引き離したボルトは「“雨に唄えば”ではなく“雨に走れば”だった」と、ミュージカルの名作映画に引っかけて最後のレースを振り返った。

 大邱の世界選手権ではフライングによるまさかの失格。同じジャマイカの後輩ブレークに優勝を譲ってしまった。「あの失敗を忘れることはないが、リベンジのためにここに来たのではない」と言いながらも期すものがあったはずだ。「準決勝が終わって足に疲労感があった。おまけに悪天候。もっといい記録をマークしたかったができなかった」。今季の自己ベストではあるが自身が保持する世界記録(9秒58)には遠く及ばない不本意な?優勝タイム。それでも世界最速男の称号だけは、がっちりともぎとった。

 「自分が一生懸命に走ることで、多くの人に嫌なことを忘れさせてやりたい。それが自分の使命だ」。大会前に今季世界最高(9秒75)をマークしていたタイソン・ゲイ(31=米国)や、100メートルの前世界記録保持者で同じジャマイカで切磋琢磨(せっさたくま)してきたアサファ・パウエル(30)らが薬物違反で出場を辞退。「メールで“強い気持ちでいてほしい”と励ましたけれど、とてもつらかった」と、パウエルの置かれた状況はボルトにとっても苦痛だった。

 それだけに暗雲を振り払うような金メダル。16日に始まる200メートルでは再び、陸の稲妻が青いトラックを疾走するだろう。

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