福士 銅メダル!出場危機乗り越え日本メダル1号!

[ 2013年8月11日 06:00 ]

ゴールした後、ガッツポーズする福士

陸上世界選手権女子マラソン

(8月10日 ルジニキ競技場発着、モスクワ川沿い周回コース)
 日本のメダル1号だ!最初の決勝種目の女子マラソンで、3000メートル、5000メートルの日本記録保持者・福士加代子(31=ワコール)が2時間27分45秒で銅メダルを獲得した。30キロ手前で先頭集団から脱落したが、35キロすぎに3位に浮上。日本勢2大会ぶりのメダルにたどり着いた。エドナ・キプラガト(33=ケニア)が2時間25分44秒で2連覇を達成。木崎良子(28=ダイハツ)は4位、野口みずき(35=シスメックス)は途中棄権した。 

 42・195キロを駆けた後とは思えないほど、元気いっぱいだった。今大会の日本勢のメダル1号となる銅メダルを獲得した福士は、スタンドに向かって何度も手を振り、日の丸を掲げて何度も跳びはねた。3000メートル、5000メートルの日本記録を保持し、世界選手権に4度、五輪には3度、トラックで出場したが、入賞には一度も届かず。初めて出場した世界大会のマラソンで結果を残し、“福士節”が全開だ。

 「イェーイ!良かった、頑張った、楽しんだ!もう走りたくないっ!もうやだ!」

 過去4度のマラソンは全て終盤に失速。この日も30キロ手前で先頭集団から脱落したが、景色や応援団を眺めているうちに、3位のメルカム(エチオピア)の姿が眼前に迫り、35キロで抜いた。「(マラソンで)初めて抜いたね!前が見えると元気になった。前の人が落っこちてくると便利だねぇ」。野口が熱中症で棄権に追い込まれたタフなレース。福士は序盤から給水を取り、ミストシャワーのポイントでは帽子を脱いで頭から水を浴びた。「あちい、あちい」と連呼したが、きっちりと対策を練っていた。

 実は欠場寸前に追い込まれていた。3月末にインフルエンザにかかったが、薬をあまり服用しなかったため完治に時間がかかった。永山監督は「福士は青森出身でりんごを食べて病気を治してきたから、薬が嫌い」と説明する。その後、自律神経に不調をきたし、栄養失調で5月上旬まで練習ができなかった。同月末から野口と米コロラド州ボルダーで合同合宿を行ったが、貧血も発症してアテネ女王に付いていけなかった。

 スタートラインに立つため、これまで「面倒だから」と避けていたサプリメントを摂取して体調回復に努めた。だが、7月のスイス・サンモリッツ合宿では1キロ3分30秒も切れない。永山監督が「もうやめよう」と欠場を勧めると、何も言わずに涙を流した。出場を決断したのはレース1週間前。「ここまで長かったぁ」という言葉には実感がこもっている。

 苦難を乗り越え、たどり着いた世界の表彰台。「次の目標は何もない。集大成、集大成」と話したが、永山監督は「走れる以上は日本記録を狙い続けたい」と成長に期待を寄せる。今後はスピードを生かし、野口の持つ日本記録(2時間19分12秒)更新がターゲットだ。完璧なトレーニングをこなして完璧に42・195キロを駆けた時、“トラックの女王”は“マラソンの女王”になる。

 ◆福士 加代子(ふくし・かよこ)1982年(昭57)3月25日、青森県板柳町生まれの31歳。五所川原工高から00年にワコール入社。02年7月に3000メートルで8分44秒40、05年7月には、5000メートルで14分53秒22の日本記録をマーク。06年アジア競技大会で1万メートル優勝。五輪には04年アテネ、08年北京、12年ロンドンと3大会連続で出場している。愛称は「みちのくの爆走娘」。1メートル61、45キロ。

 【女子マラソン】
(1)キプラガト(ケニア) 2時間25分44秒
(2)ストラーネオ(イタリア) 2時間25秒58秒
(3)福士加代子(ワコール) 2時間27分45秒
(4)木崎 良子(ダイハツ) 2時間31分28秒
 ― 野口みずき(シスメックス) 途中棄権
[世]ラドクリフ(英国) 2時間15分25秒
[日]野口みずき 2時間19分12秒

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