上村会長降ろし再燃も…全柔連 不適切助成金6055万円

[ 2013年6月22日 06:00 ]

JSCの河野一郎理事長に最終報告書を手渡す上村春樹会長

 全日本柔道連盟(全柔連)の助成金問題を調査する第三者委員会は21日、東京都文京区の講道館で最終報告の内容を発表した。電話聴取やアンケートまで駆使して約3カ月に及んだ調査の結果、一部の指導者には助成金の受給資格がなかったことを認定した。同委員会は全柔連の執行部から異例の要望書が出ていたことなどを説明し、上村春樹会長ら執行部のガバナンス(統治)能力にも疑問符をつけた。

 全柔連が受け取っていた助成金の一部は、本来受給資格のない“不正”なものだった。第三者委員会はそう結論づけた。

 対象期間の07~12年で、受給資格がなかったと判断されたのは27人。15人は当該選手への指導実態が全くなかったとされ、12人は「一部の期間において」認められなかった。活動報告書の内容と照らし合わせ、「担当選手との関係が間接的で、あまりにも薄い」場合は「認められないのは当然」とした。

 その期間に、指導者が日本スポーツ振興センター(JSC)から受け取った助成金は3620万円。全柔連が助成金の一部から半強制的に徴収していた「強化留保金」も、少なくとも3345万円ある。それらの重複した部分を排除すると、不適切な助成金の総額は6055万円とばく大な金額になった。

 最終報告を受けて、上村春樹会長はJSCの河野一郎理事長に報告書の提出と謝罪を行った。河野理事長は「留保金があり得ない金額だ」と批判し、「組織としてどう対応するのか」と全柔連の動きを見ながら、不適切と認められた助成金の返還請求を行う考え。凍結している指導者への個人助成の扱いも全柔連の結論を待ち、今後の扱いを決めるという。

 第三者委員会は、強化委員長などを務めた吉村和郎前理事が「最も重い責任を負う」と指摘。上村会長には吉村氏の任命など組織の長としての責任もあるとした。山内委員長は「果たして今の対応でいいのか」と全柔連トップとしての上村会長の態度に疑問を呈し、「会長自身がぜひいろいろ考えていただきたい」と語った。

 上村会長自身はこの日は「真摯(しんし)に受け止める。理事会に今回のご意見を諮ってから話します」と語るのみだった。24日に臨時理事会、25日には評議員会が控えている。11日の理事会では続投宣言をしたものの、進退問題が再燃することは避けられない。

 ◆第三者委報告書骨子
 一、07年度から27人の指導者が不正に助成金受給
 一、強化委員長だった吉村和郎前理事が最も重い責任を負うべきだ
 一、上村春樹会長らにも責任がある
 一、助成金受給者から徴収した「強化留保金」は明らかに不適切
 一、現場の意向を聞かずに物事を決める上層部の体質は改善していない

 ≪不可解な使い道…葬儀費用も計上≫この日の第三者委員会の資料では強化留保金の使い道についても一部発表されたが、異質だったのは、全柔連事務局員の葬儀費用として計上された30万円。関係者によると、急逝した事務局員に対し事務局として負担する予定だった葬儀費用が不足。村上清事務局長が吉村和郎前強化委員長に対し強化留保金からの拠出を懇願したという。事務局も留保金の流用を認知していたという証拠でもあり、これが事実なら「(流用は)1人の常軌を逸した人物によるもの」とした要望書の内容は、説得力のないものとなる。

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2013年6月22日のニュース