伊藤みきW杯初V!ソチ五輪へ期待の次世代エースだ

[ 2013年2月25日 06:00 ]

フリースタイルスキー・モーグルのW杯第9戦女子デュアルモーグルで初優勝を果たし、メダルを手に笑顔を見せる伊藤みき

フリースタイルスキーW杯モーグル第9戦猪苗代大会

(2月24日 福島県猪苗代町・リステルスキーファンタジア)
 デュアルモーグル方式によるモーグル第9戦を行い、伊藤みき(25=北野建設)がW杯初勝利を挙げた。予選2位から決勝戦まで勝ち上がり、ミカエラ・マシューズ(21=米国)を28―7で破った。里谷多英(36)、上村愛子(33)に続く次世代エース。日本勢として09年猪苗代大会の上村以来となる優勝をつかみ、来年のソチ五輪に向けて大きな一歩を踏み出した。男子はブラドリー・ウィルソン(20=米国)がW杯初優勝。日本勢は遠藤尚(22=忍建設)の13位が最高だった。

 底抜けに明るい笑顔がはじけた。初めてのシャンパンファイトは、日本開催ならではのスパークリング日本酒。なかなか栓が開けられず、周りの選手に手伝ってもらって勝利の美酒にたどり着けた。果たしてそのお味は?「…お酒でした」と単純明快に答えて、伊藤はまた笑った。

 「常に高い集中を保ってスキーできるのが自分の滑り」。デュアルでは予選から決勝まで、いい滑りを5本続ける必要がある。決勝戦では途中で相手が大きく遅れても、気を取られずにゴールまで駆け抜けた。難コースでの初優勝はまさに伊藤の真骨頂だった。

 昨夏には練習中に右足首を捻挫し、全治4週間と診断された。しかし、焦ることなく技術と体を見つめ直した。全日本スキー連盟の林辰男部長は「昨季はスキーがスライドしていたが、真っすぐにコブを攻められるようになった。基礎体力もついてきた証拠」と今季の成長を実感している。

 前日の第8戦は第1エアの後にミスが出て、予選で敗退した。今季初めて決勝を逃して落ち込みもしたが「そういう日もある。次の五輪へ勉強をしていけばいい」とすぐに切り替えられた。ケガを乗り越え、精神的にもタフさを増していた。

 モーグルを始めた小学生の頃に見たのが98年長野五輪での里谷の金メダルだった。五輪への憧れを抱かせてくれた先輩がラストランを行った大会で、その背中を追ってきた伊藤がついに殻を突き破った。

 「今後はシングルでも優勝したい。自分ができるステップを踏み続けた先にソチ五輪がある」。会場で観戦した母・敦子さん(55)は伊藤の性格について「悔しい時は泣いて、勝ったら大喜びするタイプ」だと言う。前回のバンクーバー五輪ではメダルを期待されながら12位。あの時の涙をソチで大きなスマイルに変える。その準備は着実に進んでいる。

 ◆伊藤 みき(いとう・みき)1987年(昭62)7月20日、滋賀県日野町生まれの25歳。両親の影響で3歳からスキーを始め、小2の時にモーグル教室に入る。姉・あずさ(27)、妹・さつき(19)も選手。近江兄弟社高から中京大を経て北野建設に入社。トリノ五輪は20位、バンクーバー五輪は12位。昨季W杯はデュアルで2位と3位が1回ずつで総合7位と躍進。1メートル62、53キロ。

 ▽デュアルモーグル 1人ずつ滑るモーグルに対し、2人同時に滑って対戦。予選は1人で滑り、上位16人がトーナメント方式の決勝に進む。決勝では7人の審判(ターン4人、エア2人、スピード1人)がそれぞれの持つ5点を振り分けて採点。五輪では実施されないが、世界選手権では99年から実施。

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