沙羅 W杯日本人年間最多7勝目!総合V王手

[ 2013年2月17日 06:00 ]

今季7勝目を挙げ、表彰台で笑顔を見せる高梨沙羅(中央)

ノルディックスキーW杯ジャンプ女子個人第13戦

(2月16日 スロベニア・リュブノ=HS95メートル、K点85メートル)
 高梨沙羅(16=グレースマウンテン・インターナショナル)が総合優勝に王手をかけた。1本目に最長不倒の88・5メートルで首位に立ち、2本目も88メートルで合計225・1点で完勝。W杯3連勝を飾って今季7勝目(通算8勝目)を挙げ、複合の荻原健司とジャンプの葛西紀明の6勝を抜き、W杯の日本人シーズン最多勝利となった。17日の個人第14戦で総合優勝が決まる可能性も大。W杯総合優勝はジャンプでは日本人初、冬季競技でも複合の荻原健司、モーグルの上村愛子に次いで3人目の快挙となる。

 他の選手を圧倒する飛行曲線で高梨が飛んだ。1本目からK点を越えて最長不倒の88・5メートル。2回目も88メートルまで伸ばし、追い風の悪条件をものともしなかった。とはいえ、可愛らしい笑顔を見せたのは少しだけ。「出来は80点ぐらい。2回ともテレマークが入らなかったのがとても残念。どんな条件でも入れたい」と内容にこだわる姿勢が強さを際立たせた。

 2週前に行われた地元・北海道でのW杯は力みもあって惨敗した。その翌週に蔵王で1日2勝を挙げて復調すると、今大会では揺るぎない強さを示した。前日の公式練習から3回とも1位の距離をマーク。課題としていた助走路の滑りも感覚を取り戻して「内容がよかった」と不安を払しょくして迎えた本番だった。

 揺るがなかったのはジャンプだけではない。精神面もそうだ。今大会直前には渡瀬弥太郎ヘッドコーチが経済的な理由などを原因に辞任を表明。今遠征に合流しなかった。小学6年生の時から指導を受けていた高梨にとってショックもあったはず。それでも動揺を見せずに結果につなげた。

 その渡瀬氏は高梨について「本当に巡り合わせがいい」と語っていたことがある。女子ジャンプの五輪種目採用が決まったのは11年4月。その後に行われたユース五輪やW杯シリーズでは、年齢制限をぎりぎりで回避して大舞台を経験できた。

 向上心と吸収力は人一倍。初開催だった昨季のW杯は総合3位とステップを踏み、ソチ五輪前年に7勝。ライバルのヘンドリクソンは昨春に左膝を手術して万全でないとはいえ、その力は頭一つ抜け出ている。まさに女子ジャンプの申し子だ。

 昨季は最終戦でヘンドリクソンが総合優勝し、クリスタルトロフィーを授与されるのを見た。「格好よかった。トロフィーは凄く大きくて重たそうだった」。総合優勝やソチ五輪が話題に上ると、いつも「目の前の一戦一戦でベストを尽くしたい」と答えてきた16歳。金色の輝きはまだ1年先の話だが、クリスタルに輝く栄誉はもう「目の前」まで迫ってきた。

 ◆高梨 沙羅(たかなし・さら)1996年(平8)10月8日、北海道上川町生まれの16歳。ジャンプ一家に生まれ、上川小2年でアルペン用スキーでジャンプを始める。11年1月のHBCカップ女子の部で141メートルの大倉山の女子最長記録で優勝。男子優勝の伊東大貴の139メートルを上回り注目される。今季は女子W杯で7勝(通算8勝)をマーク。1メートル51、43キロ。

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2013年2月17日のニュース