伊達 灼熱マッチ制し3回戦へ 40代女子史上2人目の快挙

[ 2013年1月18日 06:00 ]

全豪オープン女子シングルス3回戦進出を決め笑顔を見せるクルム伊達公子

全豪オープンテニス第4日

(1月17日 オーストラリア・メルボルンパーク)
 女子シングルス2回戦で、世界ランク100位のクルム伊達公子(42=エステティックTBC)が同90位のシャハー・ピアー(30=イスラエル)を6―2、7―5のストレートで下し、18年ぶりに3回戦に進出した。08年の現役復帰後、4大大会の3回戦進出は初。68年のオープン化以降、40歳以上の女子では79年全米オープンのレニー・リチャーズ(米国)以来34年ぶりの快挙となった。同72位の森田あゆみ(22=キヤノン)も3回戦に進み、日本女子2人の2回戦突破は15年ぶり。男子シングルスの添田豪(28=空旅ドットコム)は2回戦で敗退した。

 相手のリターンがネットにかかって勝利が決まると、苦しげな表情が和らいだ。両手でガッツポーズをして、灼熱(しゃくねつ)のコートに白い歯を輝かせた。68年のオープン化以降、40歳以上の女子の最高成績に並ぶ3回戦進出。42歳の伊達が、気迫で新たな金字塔を打ち立てた。

 簡単な勝利ではなかった。試合終了30分後に気温40度を記録したメルボルン。第1セットは相手のサービスゲームを全て奪ったが、その後、体に異変が起きた。「第2セットの3―0の場面で鉛のように体が重くなって足が止まってしまった」。急激に運動量が落ち、3―4と逆転を許した。第8ゲームを粘り強くキープして迎えた第9ゲーム。ここが勝負の分岐点となった。「あそこで決まらなかったら精神的にも肉体的にもガクッと来てたと思う。気持ちとプレーがかみ合い、流れをうまく引き寄せられた」と会心のフォアショットで気持ちを奮い立たせた。左右に振られたラリーにも食らいつきブレーク。ベテランの意地を見せた。

 女子日本代表の村上武資監督(47)も「普通じゃない。負けパターンの試合。切り替えの早さがある」と絶賛。ここ一番の集中力については「練習から誰も近づかせない雰囲気を出す。常に完璧を求めないと気が済まないタイプ。ナダルのような感じ」と説明。“完璧主義”が相手の嫌がるポイントを何度も突く執ようなプレーにつながるという。

 08年の現役復帰後、4大大会では初の3回戦進出。「このレベルで3試合戦うことは今までできなかった。こんな日が来るとは思わなかった」とベテランの顔は自然とほころんだ。3回戦の相手は2回戦で第17シードを7―5、7―5で下し4大大会初の3回戦進出を決めた世界ランク56位のボヤナ・ヨバノフスキ(21=セルビア)。2倍の人生を歩んできた伊達は勝負の厳しさを教え、さらなる金字塔を打ち立てる。

 ▽40歳以上の3回戦進出 79年の全米オープンでレニー・リチャーズ(米国)が達成しているだけで、伊達が2人目。米国の名門イエール大卒の眼科医だったリチャーズは元男性で、41歳だった75年に性別適合手術を受けた。翌年の全米オープンに参加を申し込んだが米国テニス協会から拒否され、裁判を起こしたことで広く知られている。ニューヨークの最高裁は77年にリチャーズの主張を認める判決を下した。その後、1メートル85のリチャーズは長身を生かしたプレーで活躍。引退後はマルチナ・ナブラチロワのコーチも務めた。

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