幕尻の千代大龍9勝、白鵬に1差 理事長「怖い存在」

[ 2012年11月22日 06:00 ]

豊ノ島を引き落としで破る千代大龍

大相撲九州場所11日目

(11月21日 福岡国際センター)
 千代大龍が平幕の2敗対決で豊ノ島を引き落としで破り、幕内4場所目で自己新の9勝目を挙げた。全勝だった白鵬、1差で追っていた日馬富士はそれぞれ、佐渡ケ嶽部屋のカド番大関の琴欧洲、琴奨菊に苦杯。西の幕尻力士が一気に優勝戦線に浮上した。
【取組結果】

 なりふり構わず、一瞬で勝負を決めた。千代大龍は立ち合いで右脇をがっちり締めて体当たり。豊ノ島の左差しを阻止すると同時に上体を浮き上がらせた。間髪入れずに右へ体を開いて引き落とし。三役経験豊富な実力者もたまらず土俵に両手をついた。

 この日朝、日体大相撲部の斉藤一雄監督からメールが届いた。「何が何でも左を差させるな」。プロ入り後も本場所になれば欠かさず助言をくれる恩師の言葉を守り、幕内4場所目で自己新の9勝目を挙げた。師匠の九重親方(元横綱・千代の富士)に厳しく戒められた引き技での白星だけに、花道を引き揚げる際はバツが悪そうに表情を硬くした。だが支度部屋では「当たりがよかったんで引きも決まったと思います」とヤンチャな笑みを見せた。

 10年に学生横綱となり、昨年5月の技量審査場所で幕下付け出しデビューしたばかり。だが、既に引退後の人生設計がある。「学校の先生になって相撲を教えたい」。理想像はたっぷりの愛情を注いでくれた斉藤監督。今年初場所の十両昇進後は、相撲指導者としての活動資金に充てるため、月給の半分以上を貯金している。「教え子にご飯を食べさせたり、ご褒美をあげたり。今、自分でお金を使うのはプロテインぐらいなんで」

 2桁勝利に届けば三賞の有力候補になり、受賞すれば200万円の臨時ボーナスが入る。「優勝争いは全然、考えてません。でも三賞は欲しいッス」。そう話して会場を引き揚げた後には両横綱が敗れる波乱となり、白鵬に1差と迫った。北の湖理事長(元横綱)はまだ大銀杏(いちょう)も結えない西の幕尻の若手を「怖い存在」とダークホースに指名。200万円どころか、優勝賞金1000万円を手にするチャンスを迎えた。

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2012年11月22日のニュース