元ニート 勢が1敗守る 小学校からの宿敵・豪栄道に刺激

[ 2012年11月18日 06:00 ]

立ち合いで千代の国(左)と激しくぶつかる勢

大相撲九州場所7日目

(11月17日 福岡国際センター)
 幕内3場所目の勢が千代の国をはたき込みで下し、1敗をキープした。今年の春場所に25歳で新入幕を果たしたが、小学生時代に同じ相撲道場に通った豪栄道の活躍に刺激を受けて発奮。無敗のライバルを1差で追いかける。白鵬と豪栄道は全勝を守り、1敗は日馬富士と平幕の勢、豊ノ島、千代大龍。今場所初めて満員御礼の垂れ幕が下りた。
【取組結果】

 遅れてきた大物の“勢い”が増してきた。勢は千代の国の突っ張りを落ち着いて受け止め、冷静にはたき込んで平幕トップタイの1敗を死守。「相手がよく見えてる。余裕がある。今は勝とうが負けようが一日一番しか考えない」と言葉に力を込めた。

 遠回りの相撲人生を歩んできた。小学生から大阪の名門だった「古市道場」に通い、同級生の豪栄道とともに稽古を重ね、全国に名をとどろかせた。小学4年時の全国大会で先代伊勢ノ海親方(元関脇・藤ノ川)の森田武雄氏に見込まれ、何度も何度も「待ってるからな」と大阪の実家で口説かれた。

 しかし、中学卒業後は「したいことをしたい」と3年間“ニート生活”を送った。実家の寿司店を手伝いながら「おばあちゃん子だった」と祖母・辻谷冨美子さん(享年64)の家に入り浸ったり、大好きなゴルフの練習に明け暮れ、スコアも79まで伸びた。片や、豪栄道は名門・埼玉栄に入学して相撲部のエースとして活躍。「周りからはいろいろ言われましたけど…」。05年1月。亡くなった祖母の葬式に駆けつけてくれた先代から「おばあちゃんが旅立ったのだから、お前も旅立ってもいいんじゃないか」と言われ、ようやく入門を決断。幕下上位で何度も壁にぶち当たったため、スピード出世を果たした豪栄道から入幕は4年半も遅れたが、ライバルの背中が見える位置までたどり着いた。

 勢は豪栄道について「対戦することが次の目標」と対抗心を燃やすが、豪栄道は勢について「(意識は)ない」という。今は自分一人のライバルストーリーだが、大関候補最右翼にアッと言わせる瞬間はそう遠くないはずだ。

 ◆勢 翔太(いきおい・しょうた、本名=東口翔太)1986年(昭61)10月11日、大阪府交野(かたの)市生まれの26歳。交野市立第三中卒。05年春場所に初土俵。入門から所要7場所で幕下に昇進したが、そこから5年半足踏み。11年九州場所に新十両を果たし、今年春場所に新入幕。得意は右四つ、寄り、投げ。趣味はカラオケで十八番(おはこ)は山本譲二の「みちのくひとり旅」。独身。血液型B。

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