「重たい物が背中に」「全てを懸け再建」康生新監督が就任会見

[ 2012年11月6日 06:00 ]

会見する井上康生新監督

 全日本柔道連盟(全柔連)は5日、日本代表の男子新監督に井上康生氏(34)が就任すると発表した。女子は園田隆二氏(39)が留任する。00年シドニー五輪男子100キロ級で金メダルを獲得した井上氏は、篠原信一前監督の辞意を受けて代表コーチから昇格。ロンドン五輪で金メダルなしに終わった男子の再建を託される天才柔道家は、テーマに「総合力」を掲げた。

 柔道の総本山、講道館で会見に臨んだ井上氏は「覚悟と同時に、重たい物が背中にどっかりと載っている感覚」と表現した。打診を受けたのは、世界団体選手権後の10月末。「びっくりした」と振り返ったが「全てを懸けて再建する」覚悟が固まったと話した。

 五輪2大会が通例の代表監督だが、篠原前監督が史上初の金メダル0の責任を取る形でロンドン五輪1大会で辞任。34歳の若さ、引退から4年という異例の早さでの監督抜てきだが、会見では早くも熱弁を振るった。

 テーマに「総合力」を掲げ「心技体がそろってこそ、日本は世界と戦える」と話す。中でも技術と体力で具体的な方向性を示した。日本は「しっかり組んで一本を取る柔道」が伝統。金1個の88年ソウル五輪など、危機が訪れるたびに伝統回帰で乗り越えてきたが、井上氏の発想は「回帰」ではなく「進化」に近い。

 技術面では「一本を取る柔道を変えるつもりはない。ただ、組めば投げることができるのではなく、いかに組み、いかに一本を取るまでの過程をつくるか」と表現。度重なるルール変更や、日本柔道を丸裸にした海外勢への対策を取り込んだ「時代に合った技」を研究していく方針だ。体力面は、乱取りやランニングなどの単純な強化だけでなく「柔道は全身運動。効率よく体を使う」柔道を目指す考えを明かした。

 全身のバネを使う、抜群の切れを誇った内股で「分かっていても投げられる」と世界から恐れられた井上氏。打倒JUDOを託された日本の切り札は、伝統の上に新しい「ニッポン柔道」を積み上げて、創始国の復活を期す。

 ▽井上 康生(いのうえ・こうせい)1978年(昭53)5月15日、宮崎県出身の34歳。99年、100キロ級代表として初出場の世界選手権で優勝。翌年のシドニー五輪ではオール一本で金メダルを獲得した。01、03年と世界選手権は3連覇。全日本選手権でも01年に篠原信一を破り初優勝を飾り、3連覇を達成した。家族はタレントの東原亜希夫人(29)と長女、長男。

続きを表示

この記事のフォト

2012年11月6日のニュース