日馬富士 貴乃花に並ぶ30連勝で横綱昇進“当確”

[ 2012年9月23日 06:00 ]

鶴竜(左)を寄り切りで破った日馬富士

大相撲秋場所14日目

(9月22日 両国国技館)
 全勝で優勝争いの単独トップを走る日馬富士(28=伊勢ケ浜部屋)は鶴竜(27=井筒部屋)との大関対決を寄り切りで制し、初日から14連勝で横綱昇進を決定的にした。昇進問題を預かる審判部は23日に昇進を審議する理事会の招集を北の湖理事長(元横綱)に要請することを決定。26日にも第70代横綱・日馬富士が誕生する見通しとなった。30連勝の日馬富士は千秋楽で1敗の白鵬(27=宮城野部屋)との直接対決を制し、4度目の賜杯で昇進に花を添える。
【取組結果】

 入門から11年半。夢にまで見た横綱の地位を手中に収めた日馬富士は土俵下に降りると瞳を潤ませた。勝ち残りのため、東の控えに座ると、まぶたを閉じて高ぶる気持ちを抑制。「あすの相撲のことだけに集中していた。特に何も考えていない」。14戦無敗で昇進を決定的にしても、千秋楽の白鵬戦だけを見据えていた。

 大事な一番で自分自身を貫いた。持ち前のスピードで鶴竜を押し込み、両腕を相手の脇の中へ。あとは「中に入ったら出るだけ」と迷わず前に出た。2秒1。夏場所千秋楽から続く連勝記録も貴乃花に並ぶ「30」に乗せ、満員御礼の館内から拍手喝采を浴びた。

 この日、審判部は会議を開き、場所後の26日に昇進を審議する理事会の開催を北の湖理事長に要請することを決定。朝日山審判部副部長(元大関・大受)は「ケチのつけようがない。優勝できなくてもいい」と話した。また、横綱審議委員会(横審)の鶴田委員長(元日本経済新聞社社長)は「王手をかけた」と前日と同じ見解を示したが、「仮に千秋楽で負けても(昇進することには)変わりないと思う」と事実上のOKサインを出した。

 入幕当時は上位に対して全く通用しなかったが“史上最悪の日”を原点として日馬富士は番付を上げた。06年12月28日、交通事故で父・ダワニャムさんが50歳で急逝した。すぐにモンゴルに駆けつけたが、初場所が迫った翌年1月6日に再来日する際には母ミャグマルスレンさんに「1人にしてごめんね、一番大事なときに」と号泣しながら謝罪。「死ぬ気で日本に来ましたね」。その頃から父の社会貢献活動を引き継ぎ、植樹や救急車の贈呈を積極的に開始。土俵上でもそれ以来、休場を除いた33場所中32場所で勝ち越し。今年7月末に帰郷した際には父の墓前に横綱昇進を誓った。

 千秋楽には母、妻、そして2人の子供を招待。兄貴と慕う元横綱・朝青龍のドルゴルスレン・ダグワドルジ氏も祝福に駆けつける予定だ。「ベストを尽くし、悔いのない相撲を取りたい」。連勝を31に伸ばすことで、自らを支えた全ての人に自らが横綱の器であることを証明する。

 ▼北の湖理事長(元横綱) あした白鵬との一番が残っている。勝敗は五分五分。本割、決定戦で負けたら見栄えがある。審判部が理事会の招集を要請するという意見ならそういう方向もありうる。

 ▼横審・鶴田卓彦委員長 14勝というのは、かなりレベルの高い数字だ。これでどんなに悪くても準優勝だし、立派な成績なのは間違いない。態度もそんなに悪くない。他の委員の方も、そんなに意見は違わないと思う。

続きを表示

2012年9月23日のニュース