立石 世代交代の銅「いや~やばいっすね」

[ 2012年8月3日 06:00 ]

男子200メートル平泳ぎ決勝を終え抱き合う北島と立石

ロンドン五輪競泳

 早慶仲良く銅メダル獲得だ!!男子200メートル平泳ぎで、慶大4年(休学中)の立石諒(23=NECグリーン)が2分8秒29で、4位の北島康介(29=日本コカ・コーラ)に0秒06差で競り勝って銅メダルを獲得した。女子200メートルバタフライで、早大4年の星奈津美(21=スウィン大教)は2分5秒48で銅メダルを獲得した。

 スタート台の脇にある順位を示すランプが3つともるのを確認すると、立石は左手を思い切り水面に叩きつけて喜んだ。「いや~、やばいっすね。(北島)康介さんに勝てたのもうれしいし、こういう舞台でメダルを獲れたこともうれしい」

 第1コースの立石は先行する第2コースの北島のペースに惑わされず、後方からついていった。100メートルで6番手、150メートルで3番手。「ラスト50メートルは死ぬ気で泳いだ」。猛然とスパートをかけた。上位2人には届かないがラスト5メートルで北島に並んだ。勢いに乗ったままタッチ板を叩いた。自己ベストに0秒12と迫る2分8秒29。100分の6秒差で北島に競り勝った。

 立石にとって北島は特別な存在だった。中3の時、テレビでアテネ五輪の北島の2冠を見て「日本人でも金メダルを獲れるんだ。すげえなあ」と五輪を意識した。その年の東京SC招待で、北島からもらったサインは今も実家にある宝物だ。高2で北島の200メートル高校記録を抜き「ポスト北島」と期待された。だが、大学1年の08年北京五輪代表選考会では派遣標準記録を切りながら、0秒16差の3位で代表を逃した。「次があるからな」。レース直後、落ち込んでいるときに、北島が歩み寄ってかけてくれた言葉は心の支えになった。

 09年秋、当時所属したスイミングクラブをやめ、北島を育てた平井コーチのいる東京SCへの移籍を目指したが、頓挫した。所属クラブが見つからず「もう五輪は目指せない。水泳をやめよう」と思った。10年3月に相談に乗った湘南工科大付高監督だった堀川博美さん(64)が現在の所属クラブのNECグリーンを見つけてきてくれた。恩師に「(クラブから)来てくれと言われる選手になれ!北島を食え!」とゲキを受け、再起を決意した。練習嫌いで有名だったが、決勝の舞台に立てずに終わった昨夏の世界選手権後はオフなしで練習を再開。北島が「天才」と才能を認める男が本気で目指してつかんだ銅メダルだった。

 「これまで何回もやめようと思った。苦しい時もあったけれど、諦めずにやってよかった」。レース後、北島とがっちり握手を交わした。長年、北島一人で戦ってきた日本の男子平泳ぎの新時代が幕を開けた。

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2012年8月3日のニュース