鈴木も銅 高校時代無名のシンデレラガール

[ 2012年8月1日 06:00 ]

女子100メートル平泳ぎで獲得した銅メダルをみせる鈴木

ロンドン五輪競泳女子100メートル平泳ぎ決勝

 残り25メートル。鈴木は力強いキックでスパートした。「最後は周りを見ずに泳いだ。端っこで集中できた」。準決勝を7位で通過し第1コースで泳いだ決勝。前半50メートルを6番手で折り返すと、後半は中央の選手に視界が届かず、周囲に惑わされることのない最端コースの利点を生かして猛然と追い上げた。「頭が真っ白になりそうだった」という終盤も耐え、自身の持つ日本記録に0秒14に迫る1分6秒46の3位でゴール板を叩いた。

 「初めて出ただけでもうれしいのに、まさか1コースから(表彰台に)上がれるとは正直思っていなかった」

 スタート直前、アクシデントが発生した。計器に異変が生じ「テーク・ユア・マーク」(位置について)のコール前に号砲が鳴った。約3分間中断した。「いきなりピッと鳴って、ビックリした。逆に緊張がほぐれた」

 高校時代はほぼ無名のシンデレラガール。中2のジュニアオリンピック100メートルで全国優勝したが、福岡・九産大九州高では記録が伸び悩んだ。3年時の高校総体も5位止まり。五輪出場は「想像したこともない」遠い夢の世界だった。

(高校時代無名/筋トレで台頭/) 山梨学院大に進学して、才能が目覚めた。高校では1日1時間半しか練習がなかったが、大学では1日2回の練習と筋力トレーニング。きつさのあまり父・良二さん(54)に「ゴーグルの中に涙がいっぱいたまるっちゃ」とこぼすこともあった。しかし、練習の成果はすぐに表れた。周囲が驚くほど体が大きくなり、入学時のスーツは着られなくなった。キックにも磨きがかかり、1年時の09年インカレで日本記録をマーク。トップ選手に仲間入りした。

 昨年の世界選手権は緊張で力を出せず、決勝に残れなかった。この日のレース前はプレッシャーをやわらげるために「笑えと自分に言い聞かせていた」。入場の時の無理やりの笑顔は、レース後、会心の笑顔に変わった。

 次の200メートル(1日予選と準決勝、2日決勝)は今季世界ランク2位で、さらに期待が持てる。「100メートルで勢いをつけられた。(違う色のメダルを)狙えるなら欲しい」。大ブレークの予感は十分だ。

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2012年8月1日のニュース