琴奨菊 地元・柳川に相撲で元気を!1敗キープ

[ 2012年7月15日 06:00 ]

時間一杯で気合いを入れる琴奨菊

大相撲名古屋場所7日目

(7月14日 愛知県体育館)
 大関・琴奨菊は会心の相撲で小結・豊ノ島を圧倒して1敗をキープした。出身地の福岡県柳川市が水害に見舞われたことに心を痛めたが、土俵では抜群の集中力を発揮。白星を積み重ねて故郷を勇気づけることを誓った。横綱・白鵬も会心の相撲で若荒雄を退け7連勝。全勝は大関の把瑠都、日馬富士、平幕・大道を加えた4人。

 同期に快勝しても、心から喜べなかった。支度部屋に引き揚げてきた琴奨菊は、真剣なまなざしで出身地の被害を伝えるニュース映像にくぎ付けになった。福岡県南部を流れる矢部川の堤防が決壊し、柳川市全域の7万1000人に避難指示が出されていた。食い入るようにモニターを見つめ「心配です。後援会や応援してくださる方々が…確かに土地は低いので」と声を絞り出した。

 取組前から災害の情報は耳に入っていた。動揺でボロボロになっても不思議ではなかったが、土俵に上がれば勝負に集中した。気持ちを切らさず、常に心掛けているルーティンワークを実践。時間いっぱいで最後の塩を取ると、深呼吸するように大きく両腕を振り上げて精神統一。思い切って飛び込むと、すぐに右を差し、左おっつけの体勢で豊ノ島を寄り切った。「土俵上で、いつも同じ動作をすることで気持ちの浮き沈みをなくす」。昨年秋から横綱・白鵬を参考に毎日同じ生活リズムを守り、土俵で型どおりの動きを繰り返してきた。その心掛けが大事な場面で生かされた。

 父の言葉にも背中を押された。13日夜、心配して実家に電話をかけると、父・菊次一典さん(56)に「こっちは大丈夫。土俵に集中して相撲で柳川に元気を与えてほしい」と逆にハッパをかけられた。家族や故郷への心配は尽きないが、自らの使命は真っ向勝負で感動を呼ぶ取組だと、あらためて肝に銘じた。「避難所で相撲を見ている方が少しでも喜んでくれたらうれしい」。全勝4人を1差で追う後半戦に向け、大関の闘争心は最高潮に達している。

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2012年7月15日のニュース