川内“コバトン”見えず給水失敗「挑戦終わった」

[ 2012年2月27日 06:00 ]

<東京マラソン2012>苦しそうな表情でゴールに駆け込む川内(中央)

東京マラソン

(2月26日 東京都庁発~東京ビッグサイト着の42・195キロ)
 公務員の最強市民ランナーが沈没した。ロンドン五輪選考レースの東京マラソンで川内優輝(24=埼玉県庁)は、序盤の給水に失敗するなど24キロ手前から失速し、2時間12分51秒で14位に終わった。選考レース第1弾の昨年12月の福岡国際では日本人最高の3位に入ったが、2時間7分台を狙った今大会は日本人9番手と大惨敗。五輪代表入りに、諦めムードを漂わせた。

 真骨頂の粘りは不発に終わった。20キロすぎから顔をしかめ苦もんの表情を浮かべた川内は、24キロ手前で集団から脱落した。同じように途中で遅れた昨年の東京、福岡国際では驚異の追い上げを見せたが、今大会は上位争いに加われず2時間12分51秒の14位に沈んだ。「いろんな人が応援してくれたのに結果を出せなかったことを謝罪したい」と悔しさをにじませた。

 福岡国際で日本人最上位の3位に入り、ロンドン五輪代表の有力候補に浮上。このまま選考結果を待つという常識を破り、2時間7分台を狙った東京で惨敗した。もちろん福岡国際の成績は評価対象だが、川内は「僕の五輪への挑戦は終わった。この結果で選ばれるとは思っていない。後悔はない」とあっさり白旗を揚げた。

 序盤の給水失敗が響いた。5キロ、10キロと連続でスペシャルドリンクを取れず。「動揺した。精神的に未熟だった」。ボトルにはゼッケン番号と、目印として埼玉のマスコット「コバトン」のシールを貼っていたものの、テーブルにはゼッケンしか見えないように置かれていた。最近になって視力が落ちたことで、ボトルの発見が難しかった。

 両足親指、人さし指にに血豆をつくり、ゴール後は倒れ込んで医務室に直行。「“毎回ぶっ倒れてみっともないから、2度と出るな”って手紙とかもらっていたんですが、またぶっ倒れてしまった」。昨年の東京で大ブレークし、環境は激変した。練習中に声を掛けられ写真を撮られる機会が急増。集中することが難しくなっても、「そういうのを耐えないと強い選手になれない」と言い訳はしなかった。

 五輪の夢は諦めモードだが、公務員の市民ランナーが日本男子マラソン界に刺激を与えた事実は揺るがない。「(2時間)7分台、6分台の選手が代表になってくれれば僕が存在した意味があるのかな」。次戦は4月29日にドイツで開催されるデュッセルドルフ・マラソンに挑む予定だ。ドイツの代表選考会を兼ねた同大会には、ケニア勢もエントリー。「今度は先頭集団について、ドイツ人やケニア人に日本人の強さを見せたい」。川内の挑戦に、ゴールは存在しない。

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2012年2月27日のニュース