13度目の正直!愛、卓球人生20年で悲願の日本一

[ 2012年1月22日 06:00 ]

初優勝を果たした福原は張コーチ(右)とともに感極まる

卓球全日本選手権第5日

(1月21日 東京体育館)
 勝って泣いて、そして笑った。ロンドン五輪代表同士の対戦となった女子シングルス決勝で、福原愛(23=ANA)が、石川佳純(18=全農)を4―1で撃破して初優勝を飾った。3歳で卓球を始めてから注目を浴び続けてきたが、同種目13度目の挑戦で悲願の日本一に輝いた。全日本選手権では自身20個目のタイトルで、史上初めて年代別のシングルスを完全制覇した。22日には、石川との女子ダブルスで2冠を目指す。

 タイトルの重みをかみしめながら、左拳を握りしめた。石川のバックハンドがアウトになった瞬間、福原が悲願の日本一に輝いた。挑戦13度目でやっとたどりついた日本の頂。「夢なんじゃないかなと思う。優勝することができて、ホッとしています。自分の中で一つ壁を越えることができたかな」。歓喜の涙を流し、そして柔らかく笑った。

 初めて進出した決勝は、昨年準決勝で敗れた石川との再戦だった。第1ゲームから気合全開でライバルを圧倒し、3ゲームを連取。「ちょっと急ぎすぎた」と振り返った第4ゲームこそ落としたものの、最後まで主導権を握り続けた。年末年始の中国合宿など、近年強化してきたフォアハンドを何回も打ち抜いた。前日は一睡もできないほど緊張していたが、コートでは重圧をはねのけた。

 福原にとって、全日本のシングルスのタイトル獲得は悲願だった。3歳で卓球を始め、卓球の天才少女「愛ちゃん」として小さな頃からテレビ番組で特集が組まれるなど日本中の注目を浴びてきた。数々の最年少記録を更新し、05年4月には世界ランクで日本勢のトップに立った。全日本でも勝って当然だと周囲に思われていたが、ベスト4から上には進めなかった。「日本チャンピオンになったことがなくて、ずっと肩身が狭かった」

 02年12月から指導する中国出身の張莉梓コーチ(29)は「やっと勝てた。去年負けたビデオを何度も見て研究した成果が出た」と大粒の涙をこぼした。どこに行くのも一緒で家族同然の絆で結ばれている。技術面だけではなく精神面でも支えになってくれた同コーチに恩返しを果たし、福原は「張さんがいなかったら、このタイトルはなかったので、感謝しています」と声を詰まらせた。仙台出身の福原は東日本大震災後、食品や衣類を送ったり自ら避難所を慰問したり被災者支援を続けた。そうした経験も心の成長につながった。

 23歳にして、卓球人生20年。今年の初夢にも卓球の夢を見るほど、競技に全てをささげてきたからこそ、タイトルを獲得することができた。最大の目標のロンドン五輪では、エースとして日本を引っ張る。「しっかり結果を出して、メモリアルイヤーにできるように頑張ります。五輪では、もっともっと成長した姿を見てもらいたい」。女王は世界の頂点を見据えている。

 ◆福原 愛(ふくはら・あい)1988年(昭63)11月1日、仙台市出身の23歳。3歳で卓球を始める。青森山田高から早大へ進学。04年アテネ五輪に15歳で出場しシングルスでベスト16。05年から世界最高峰の中国スーパーリーグに参戦。日本選手団の旗手を務めた08年北京五輪ではシングルスでベスト16。1メートル56、48キロ。

 【福原の全日本選手権】

 ★初タイトル 94年2月、バンビの部(小2以下)シングルスに5歳で出場。ただ一人の幼稚園児だったが、6試合全てストレート勝ちし初優勝。そこからバンビの部3連覇を飾った。

 ★ジュニア3連覇 01年12月、ジュニアの部(高2以下)シングルスでは史上最年少となる13歳で初めて優勝。並行して戦った一般シングルスでも8強入りを果たした。ジュニアの部でも3連覇した。

 ★最年少タイトル 02年12月、女子ダブルスで小西杏とペアを組み、史上最年少の14歳1カ月で全日本タイトルを獲得。小西とは04年1月、05年1月大会でも組んで3大会連続で優勝した。

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