桂治、涙の日本一!4年ぶり歴代単独3位の4度目V

[ 2011年4月30日 06:00 ]

大外返しで穴井(後方)を破った鈴木は涙

柔道全日本選手権

(4月29日 日本武道館)
 04年アテネ五輪金メダリストのベテラン鈴木桂治(30=国士舘大教)が決勝で穴井隆将(26=天理大職)に大外返しで一本勝ちし、4年ぶり4度目の優勝を飾った。優勝回数は歴代単独3位、優勝ブランクは史上最長タイ。08年北京五輪で2度の一本負けを喫し、どん底を経験した男が、諦めないことの大切さを日本中に伝えた。大会終了後の全日本柔道連盟の強化委員会で、世界選手権(8月、パリ)100キロ超級代表には鈴木と上川大樹(21=明大)が選ばれた。

 何度もスタンドに突き上げて見せた鈴木の手が、5分もしないうちに目頭を押さえる手に変わった。五輪より難しい、といわれる全日本王座への復帰。「今年に入って何十回も夢で見た。五輪とかじゃなくて、全日本を獲る夢だった。本当に夢みたい」。勝って初めて泣いた30歳の顔に、雌伏の時を超えた凄みがにじんでいた。

 2年前には一本負けした穴井との決勝。「一試合ずつ、という思いだったから、研究は1秒もしていなかった」と言うが、相手の大外刈りを誘い出し、場外際で返しての一本勝ち。「自分で技を掛けたわけじゃないから」と反省が口をついたが、全日本男子の篠原信一監督は「返せるのは、技に切れ味が戻ってきた証拠」と評した。

 国士舘大の山内直人監督は言う。「我慢の結実だ」。北京五輪は2試合連続の一本負け。「引退する勇気がなくて」続けた現役生活は、年齢との戦いにもなった。鋭い技が消え、組み負ければ諦める試合もあった。王者として推薦されてきた今大会も、昨年からは予選出場が必要になった。砕かれたプライド。だが、柔道は捨てなかった。「もう、相手を秒殺することはできない。だから、6分間終わって勝っていればいい」。この日も4回戦で1メートル93の七戸に組み負けたが耐え、終盤に流れをつかんで判定勝ち。切れ味の代わりに手にした武器は、我慢と執念だった。

 かつては、相手の研究も必要なかった。だが今は組み合わせが気になる。試合中には「負けたら試合がなくなって、楽になれるかな」と弱気も出るという。だが、その弱い自分と向き合いながらつかんだ夢。「全日本王者は世界で負けるわけにはいかない。絶対に、勝ちます」。最後に表情をキュッと引き締めた男の夢には、まだ続きがある。

 ▽全日本選手権の優勝ブランク 出場するだけで名誉とされる大会だけに、一度王座から陥落すると再び頂点に立つのは難しい。3年以上の間隔で優勝したのは過去62回の大会で猪熊功(59年→63年)だけ。2年以上の間隔でも醍醐敏郎(51年→54年)、神永昭夫(61年→64年)、金野潤(94年→97年)しかいない。

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