協会また大甘処分…尾上親方10年“平年寄り”固定

[ 2011年4月21日 06:00 ]

両国国技館から部屋に戻った尾上親方

 日本相撲協会は20日、東京・両国国技館で緊急理事会を開き、18日に酒気帯び運転の疑いで摘発された尾上親方(元小結・浜ノ嶋)を、親方の階級で最も低い「年寄」に10年間据え置くことを決めた。また今後、同等の不祥事を起こした場合は部屋の閉鎖を了承する旨の誓約書も提出させる。解雇などの厳しい処分を求める意見も出るなかで結局は“温情処分”で決着。またしても身内に甘い体質を露呈する格好となった。

 八百長問題では大量25人に厳罰を下した相撲協会だったが、身内に甘い体質はやはり変わっていなかった。理事会では尾上親方の師匠としての資質を疑問視する意見が噴出し、解雇や部屋閉鎖などの厳罰を求める声も少なからず出たという。だが、放駒理事長が「弟子もいることだし、部屋をなくしてもいいのか」と訴え、最終的に尾上親方を最下級の「年寄」に10年間据え置く処分にとどめた。放駒理事長は「最後のチャンスをやりましょうということだ」と説明。51歳まで出世できないことになった尾上親方は終始、平身低頭で「処分を真摯(しんし)に受け止め、口だけじゃなく、今後は態度で示していきたい。指導者として一から勉強していきたい」と話した。

 最悪の事態を免れた尾上親方だが、“大甘”という印象はぬぐえない。06年8月、福岡市職員が飲酒運転で3人を死亡させた事件をきっかけに、一部の自治体では飲酒運転した公務員を原則「懲戒免職」とする厳しい対応をとるなど、飲酒運転に対する世間の目は厳しい。しかも八百長問題で角界が逆風にさらされている中での不祥事となれば、一部の理事が強硬に部屋閉鎖処分を主張したのも当然だった。

 仮に尾上部屋が閉鎖となった場合、力士らは同じ出羽海一門の北の湖部屋への転籍が濃厚となっていたという。だがその北の湖親方(元横綱)は、昨年5月に暴力団がらみの不祥事により閉鎖に追い込まれた木瀬部屋から受け入れた元幕内・清瀬海の八百長関与により理事から役員待遇に降格したばかり。受け入れ先を巡って一門内が混乱するのは避けたい――との思惑が働き、今回の大甘処分につながったとみる向きもある。いずれにしても、協会対応への批判が高まるのは必至。今こそ「泣いて馬謖(ばしょく)を斬る」覚悟で取り組まなければ、相撲界の信頼回復は夢物語となってしまう。

 ◆尾上 圭志(おのえ・けいし)1970年(昭45)3月21日、熊本県生まれの41歳。元小結・浜ノ嶋。日大相撲部から三保ケ関部屋に入門し、92年初場所に幕下付け出しで初土俵。94年初場所新入幕。同年秋場所新小結。幕内在位44場所で殊勲賞1回。04年夏場所を最後に引退し、06年8月に尾上部屋を創設。大関・把瑠都らを育てた。

 ▼文科省競技スポーツ課・芦立訓課長 処分に関しては協会が決めたことですので、われわれがどうこう言う問題ではありません。こういう時期に起こしたということを重く受け止めてもらいたい。

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2011年4月21日のニュース