石巻市で被災も…警官の誇り胸に、松田2冠

[ 2011年3月28日 06:00 ]

射撃W杯男子50メートルピストルを制して表彰式で笑顔を見せる松田知幸

 射撃のW杯シドニー大会は27日、オーストラリア・シドニーで行われ、男子50メートルピストルでロンドン五輪代表の松田知幸(35=神奈川県警)が664・0点で快勝し、24日のエアピストルとの2冠に輝いた。W杯は、08年ミュンヘン(ドイツ)大会50メートルピストルと合わせて3勝目となった。全日本選手権出場のため滞在していた宮城県石巻市で東日本大震災に被災。葛藤と闘いながら出場した大会で、きっちり結果を出した。

 同じ警官が被災地に派遣される中、職場の理解があってW杯に出場した松田が快挙を達成した。24日のエアピストルに続き、50メートルピストルも制覇。「地震で大変な思いで生活している人がいて、私も家族を残して来た。プレッシャーはあったが、それ以上にやらなくちゃという責任感がより生まれた」。こわばっていた表情が、2冠で少しだけ緩んだ。

 「出来過ぎ」というほど調子は良かった。予選の最初で波に乗り、トップで決勝進出。8人による決勝も「いい感じで撃てた」と、モニターで後続との差を確認する冷静さがあった。2位に4・2点の大差。北京五輪エアピストル覇者のロウ偉(中国)らを抑え、昨年の世界選手権で2種目を制した実力をいかんなく発揮した。

 全日本選手権の前日練習を行っていた11日に宮城県石巻市で被災。その夜は近くの老人ホームで一夜を過ごし「パニックでどこに逃げればいいのか、という状況だった」という中、翌12日に車で山形経由で栃木県宇都宮市まで脱出した。テレビで惨状を目にし「怖かった。家族の心配もあった」とW杯辞退を考えた。だが、上司からは「こんな時だから日本の代表で行ってこい」と背中を押されたという。

 昨年のアジア大会で共に戦った宮城県警の秋山輝吉は、出場できなかった。被災地での援助活動に赴いた神奈川県警の同僚もいる。動揺を封じ込め、メンタルスポーツともいわれる射撃で、五輪を目指す競技者として射場に立った。世界王者は「プレッシャーに勝たなければいけない。そう思いながらやった。少しでも何かの役に立てれば」と淡々と話したが、この2冠は被災者だけでなく、日本国内のアスリートにとっても大きなエールとなったに違いない。

 ◆松田 知幸(まつだ・ともゆき)1975年(昭50)12月12日、神奈川県出身の35歳。横浜商大高時代まではバレーボール選手。警察官だった父・好裕さんに憧れて入った神奈川県警で射撃と出合う。03年から強化指定選手になり、08年北京五輪は50メートルピストルで8位入賞。昨年の世界選手権(ドイツ・ミュンヘン)でエアピストルと50メートルピストルを制し、12年ロンドン五輪の出場決定第1号となった。1メートル74、70キロ。家族は寛子夫人と2男。

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