「順席」で幕内待遇も…魁聖&栃乃若“夢散”

[ 2011年3月1日 06:00 ]

報道陣に配布された順席表で自分のしこ名を指す栃乃若

 日本相撲協会は28日、1月の初場所の成績に基づいて編成された全力士の新たな序列を史上初めて「順席」の表として、東京・両国国技館で各部屋に配布した。この日はもともとは春場所の番付発表の日だったが、八百長問題で中止。春場所では新入幕として土俵に上がるはずだった魁聖(24=友綱部屋)、栃乃若(22=春日野部屋)は「順席」に応じて今後は幕内の待遇を受けるが、いずれも複雑な表情を浮かべた。

 本来であれば、この日は新入幕会見が行われるはずだった。先場所、十両筆頭で8勝7敗と勝ち越した魁聖は朝稽古後に「本当に残念。せっかく(幕内に)上がったのに相撲が取れない」と小さな声でつぶやいた。同じく十両2枚目で12勝3敗と大きく勝ち越した栃乃若も「(春場所が)中止になった時は驚いたけど気にしても仕方ない」と硬い表情のままだった。

 24歳の魁聖の「夢」は部屋の大先輩、大関・魁皇と一緒に“幕内土俵入り”を行うことだった。相撲協会が公表した「順席」によると魁聖は西前頭16枚目。西方では最も下位の力士であるため、同じ西の正大関である魁皇の隣で土俵入りの所作をするはずだった。「いつできるか分からないですね…」。この日の午後には友綱部屋に近い亀戸天神に出向き「早く場所が来るように」と祈願したが、最後に引いたおみくじは「末吉」で「ダメじゃないですか」と苦笑い。昨年名古屋場所で新十両となって以来、故郷ブラジルにいる家族に毎場所20枚送っていた番付も送れない。魁皇からは「落ち込まないように」と励まされたという。

 22歳の栃乃若は“ご当地新入幕”という「夢」が吹っ飛んだ。兵庫県出身で地元の名門・報徳学園高時代には高校横綱に輝いた逸材。「再開するまでに力をつけたい」と意気込んだが、もう関西で新入幕を迎えることはない。

 2人とも計画されていた新入幕昇進の激励会やパーティーは取りやめとなった。魁聖の師匠・友綱親方(元関脇・魁輝)は場所が再開されても「(パーティーは)できるか分からない」と話す。角界を揺るがす八百長問題は、スケールの大きな相撲が魅力の有望株2人の「夢」をも奪ってしまった。

 ≪月給は27万3000円アップ≫魁聖と栃乃若の2人は、初めて幕内待遇となったことにより月給は十両時代の103万6000円から130万9000円に増える。ただし、褒賞金(能力給)の最低支給基準額や、在位場所数に応じて現役引退時に受け取れる養老金(退職金)の扱いは春場所が中止されたため、次に行われる場所からカウントされる。ちなみに、「順席」の言葉は、相撲界では番付により決める巡業の宿舎割り当てや、バス移動の席順を決める際などで使われている。

 ◆魁聖一郎(かいせい・いちろう、本名リカルド・スガノ)1986年(昭61)12月18日生まれ、ブラジル・サンパウロ出身の24歳。父方の祖父母が日本人の日系3世で、06年秋場所初土俵。昨年名古屋場所新十両。得意は右四つ、寄り。1メートル93、175キロ。

 ◆栃乃若 導大(とちのわか・みちひろ、本名=李大源)1988年(昭63)4月6日、兵庫県尼崎市生まれの22歳。在日韓国人3世。07年初場所初土俵。昨年秋場所新十両。得意は左四つ、寄り。1メートル95、176キロ。

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