白鵬、ミスターに“感動”をプレゼント!

[ 2011年1月17日 06:00 ]

玉鷲(手前)を叩き込みで下す白鵬

大相撲初場所8日目

(1月16日 両国国技館)
 大鵬に並ぶ史上2位タイの6場所連続優勝を狙う横綱・白鵬(25=宮城野部屋)は平幕の玉鷲(26=片男波部屋)をはたき込んで、初日から8連勝。プロ野球、巨人の終身名誉監督である長嶋茂雄氏(74)が館内で見守る中で圧倒的な強さを披露した。無敗だった栃乃洋(36=春日野部屋)が翔天狼(28=藤島部屋)に敗れたため、中日で早くも白鵬が単独トップとなった。

 同じ“常勝”を求め続けたミスターの前では絶対に負けられなかった。巨人の終身名誉監督を務める長嶋氏がおよそ50年ぶりに大相撲を観戦する中、白鵬は玉鷲を3秒3で一蹴。相手が立ち合いで左に動いてきたが、冷静に右でかち上げ、最後は左手ではたき込んだ。「支度部屋でテーピングを巻いている時から(長嶋氏が)テレビに映られてましたね。いい相撲を見せたいというより、私は土俵に上がるだけでした」。全くスキのない取組を披露した25歳は、横綱としての仕事を全うできたことに喜びを感じていた。白鵬の取組中だけ、立ち上がって観戦した長嶋氏は「やっぱり横綱はスピードが違うな~。貫禄勝ちと言うよりも、相撲にならなかったな」と賛辞を贈った。

 白鵬は朝稽古後、定期的にキャッチボールを行うなど大の野球好きで知られる。08年4月の巨人―中日戦(東京ドーム)の始球式では、112キロの直球を投げ込んでスタンドを沸かせた。現在、モンゴル野球協会の名誉会長を務めており、何度も母国に野球用具を贈ってきた。来年のロンドン五輪から正式種目から野球が外れたことに心を痛めており、この日も「長嶋さんは国民の心をつかむものを人間的に持っている。多くの国に野球を広めてもらいたいですね」と熱く語った。

 長嶋氏は巨人の監督を務めていた94年10月8日、伝説の名勝負として語り継がれている“10・8決戦”で中日を下して監督復帰後、初のリーグ制覇。翌95年シーズン前に「この優勝をきっかけに連覇を続けてほしい」という願いを込めて知人から“木鶏”(木彫りの鶏)を贈られた。白鵬が尊敬する双葉山は69連勝がストップした日の夜に知人の陽明学者、安岡正篤氏に「イマダ モッケイタリエズ」と打電。木鶏とはどんな相手にも無心で戦える天下無敵の鶏のことで、白鵬もその境地に達することを人生の目標にしてきた。長嶋氏も安岡氏と親交があり、95~01年に東京ドームの監督室にその“木鶏”を置き、現在の白鵬と同じように“常勝”を目指した。

 戦後の角界を彩った“栃若”とも親しかったという大相撲ファンの長嶋氏だが、約50歳下の白鵬とは、同じ常勝を目指した者にしか分からない心境を共有できたのかもしれない。「引っ張っていく強い気持ちでやるだけ」と白鵬。常に勝利を求め、ファンを沸かせてきた長嶋氏のように、白鵬もまたファンの記憶に残り続ける名横綱を目指す。

 ≪斎藤にエール「体を大きく…」≫白鵬が斎藤にエールを送った。連日のフィーバーについて「野球はそういうもの。相撲でプロに入って1年で頑張れっていうのはないからね」と分析。角界の頂点である横綱を務める身として「1年目が楽しみだね。もう一段と体を大きくすれば、もっといいね」と期待を込めていた。

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2011年1月17日のニュース