帝京大、連覇!早大撃破し対抗戦4位から下克上

[ 2011年1月10日 06:00 ]

優勝を決め、歓喜の帝京大フィフティーン

ラグビー全国大学選手権決勝

(1月9日
国立競技場)
 関東対抗戦4位の帝京大が同1位の早大を17―12で下し、5チーム目の2連覇を飾った。前半6分にフランカー吉田光治郎主将が先制トライを決めると、自慢の重量FWで試合の主導権を握って逃げ切り勝ち。関東対抗戦グループでは展開ラグビーを掲げて早・明・慶に3連敗して4位にとどまったが、大学選手権では強みであるFW中心のラグビーに戻して一気に頂点に立った。来季は同大(82~84年度)以来2チーム目の3連覇を目指す。

 最後まで重量FWの勢いが衰えなかった。17―12の5点リードで迎えた後半39分。早大BK陣が同点トライを狙って自陣から展開してきた。帝京大は8人のFWが一丸となってボールに殺到すると、後半だけで7本目のターンオーバーからラックを形成。40分を告げるホーンが鳴ると、SH滑川がタッチに蹴り出した。

 2季前の決勝で敗れた早大に雪辱しての2連覇。岩出雅之監督(52)は「選手に最高のタックルをありがとうと言いたい。最高の舞台で最高の相手に勝った」と興奮を隠しきれなかった。

 開始からFWを前面に押し出して主導権を握った。前半6分に吉田光主将のトライで先制。FWが敵陣で相手にプレッシャーをかけて反則を誘い、胃腸炎を押して出場したSO森田のPGで得点を重ねた。後半は7割近いボール支配率で早大BK陣を自由に走らせなかった。ブレークダウン(ボール争奪戦)も制圧。トライ数では少なかったが、吉田光主将は「粘り強いディフェンスから今シーズン最高の試合ができた」と胸を張った。

 今季は「見ていても、やっていても楽しいラグビーをしよう」を合言葉にBKの展開ラグビーを目標に掲げたが、FWの強さが影を潜めて対抗戦で早大、明大、慶大の伝統校に3連敗。大学選手権を前に、岩出監督はやりたいラグビーを捨て、勝つためにFW中心のラグビーに変えた。練習もディフェンス中心に変更。指揮官は「選手から不満や反発があると思ったが、4年生を中心に文句を言わずにやってくれた」。選手から迷いが消えた。強豪校を連破し昨季に続いて対抗戦4位からの優勝。3敗しての日本一は史上初。歴史に残る下克上Vとなった。

 来季は早大、明大、関東学院大も成し遂げられなかった3連覇に挑戦する。決勝に出場したBK陣で滑川、森田、CTB南橋、FB竹田宜ら6選手が残る。攻撃の起点となる滑川は「来季はメンバーも残るのでBKで勝負したい。展開力のあるいいチームにして3連覇を狙う」と力強く宣言。南橋も「ワセダを超えるアタックをしていきたい」と進化を誓った。新興校から名門校へ。帝京大が黄金時代を迎える。 

 ≪富永、ミスに苦笑い≫WTB富永副将がバックス陣をけん引した。11―7の後半5分に左サイドを突破して頭から飛び込んだが、ゴールライン直前でボールを落として痛恨のノックオン。試合後はチームメートから冷やかされ「恥ずかしさと悔しさがあった。勝てたから笑い話になるけど…」と苦笑い。卒業後はオーストラリアへ語学留学する予定で、本格的なラグビーは日本選手権が最後となる。
 
 ≪ツイ、攻守に奮闘≫ニュージーランド出身のフランカー、ツイが攻守に奮闘して優勝に貢献した。昨年11月に母親が交通事故で入院。見舞いのため一時帰国し対抗戦の明大戦を欠場したが、同12月末に無事退院したということで「もう大丈夫。試合に集中できた」と笑顔。卒業後はトップリーグ・三洋電機入りが決まっており、日本選手権(2月6日開幕)に向けて「自分にとって良いテストになる」と意気込んだ。

 ≪体を張った森、胸張った≫フッカー森副将が右肩痛を押して体を張った。2日の準決勝・東海大戦で負傷して途中交代。「スローが心配だった」と言いながらも、痛み止めを飲んで後半32分まで奮闘した。試合後は右腕を動かせず、チームメートや関係者と左手で握手。「対抗戦では自分たちの持ち味を出せなかったが、原点に戻ることでFWの強みを出せた」と分厚い胸を張った。

 ◆大学選手権“下克上” 関東対抗戦4位から大学選手権を制したケースは66年の早大、68年と85年の慶大、昨季の帝京大に続き、5例目。ちなみに、関東リーグ戦では2位から頂点に立ったケースが98年の関東学院大の1例だけ。関西は優勝した同大しか大学選手権を制していない。

続きを表示

2011年1月10日のニュース