上川 強敵破り初V!日本の金最多の10に

[ 2010年9月14日 06:00 ]

上川(左)はゴールデンスコアでもリネールを激しく攻める

 アッと驚く新星の登場で、日本勢の金メダルが史上初めて10個の大台に乗った。柔道世界選手権最終日は13日、東京・国立代々木競技場で行われ、男子無差別級決勝で、上川大樹(20=明大)が世界選手権4連覇中の王者テディ・リネール(21=フランス)を延長判定で破り、初出場初優勝。12年ロンドン五輪へ男子重量級に新たなスターが誕生した。女子無差別級では杉本美香(26=コマツ)が78キロ超級に続いて優勝し、日本女子では初の2階級制覇。日本柔道にとって記録ずくめの一日となった。

 大歓声の意味を確認するには、少し時間が必要だった。8分間の激闘の末の判定。上川の目に最初に飛び込んだ旗は、リネールの青。右手に主審の白。そして、振り向いた先にあったのは勝利を意味する白い旗だ。井上康生・全日本コーチが2度、鈴木桂治が今年1月のマスターズで、そして今年の全日本王者・高橋和彦も今大会で2度敗れた王者リネールを、初対戦で倒した。表彰式で無差別級優勝の副賞、スバル・レガシィのボードを手にした20歳は「実感、ありまくりです」と目を瞬かせた。
 本来なら、いるはずのない舞台だった。重量級の最終選考会となった4月29日の全日本選手権は、予選で敗れ出場できなかった。だが、国際連盟が無差別級の出場枠を急きょ4に増やしたため、7月に追加代表入り。「ムラはあるが、一本を取れる技がある」が、選考された理由だった。
 快進撃はわずか15秒で一本勝ちした初戦から始まった。「ここだけは勝ちたい、と。決勝に行けば、銀メダルはもらえますから」と真顔で振り返ったのは、準決勝の鈴木戦。場外際の浮き落としで、この日4試合目の一本勝ち。迎えた決勝前には、中村兼三コーチとの会話で気持ちを奮い立たせた。「銀メダルで五輪は近づきますか?」「金なら近づくだろ」。
 試合では2メートルのリネールに、力で押さえつけられた。だが、延長に入り「奥襟を取りに来た相手の脚が伸びてた」と冷静に状況判断。その脚を攻めた支え釣り込み足で、3度宙に浮かせたことが大金星につながった。全日本男子の篠原信一監督は「上川には一発があるから、リネールはパワーで抑えようとして最後はバテた」と分析した。
 代表合宿に参加した2カ月間は「やる気がないなら帰れ!!」「辞めてしまえ!!」と篠原監督に罵(ば)倒され続けた。「くそ~、今に見てろ、という思いだった」と上川。ロンドン五輪まで、あと2年。「研究されて勝てなくなったら、またそこからはい上がります。篠原監督に怒られるよりはいい」と続けた。抜群の才能を評価されながら出世を阻害してきたのは、勝負に懸ける気持ち。この日の勝因を「気持ち」と言い切った20歳にとって、この金メダルは才能開花の合図に過ぎない。

 ◆上川 大樹(かみかわ・だいき)1989年(平元)11月9日生まれ、山口県山口市出身の20歳。10歳で柔道を始め、広島・崇徳高3年時に高校総体男子100キロ超級優勝。明大に進学し、09年W杯ブダペスト大会2位、今年の全日本体重別選手権で2位。組み手は右、得意技は内股。1メートル85、145キロ。

 ▼リネール (判定は)納得がいかない。いい試合で負けたのなら相手に拍手を送る。自分はフェアな男だ。精神的にも強く、いつもなら泣くようなこともない。(2冠を逃して悔し涙)

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