「明るい大関」は?白星発進も把瑠都に笑顔なし

[ 2010年5月10日 06:00 ]

栃ノ心(左)をはたきこみで破る把瑠都

 大相撲夏場所初日は9日、両国国技館で行われ、新大関の把瑠都(25=尾上部屋)が注目の初日を白星で飾った。対戦成績で2戦2勝と相性のいい平幕・栃ノ心(22=春日野部屋)をはたき込み、順調なスタートを切った。2場所連続優勝を狙う横綱・白鵬(25=宮城野部屋)は小結・栃煌山(23=春日野部屋)を寄り切り、十両以上在位111場所で史上単独1位となった魁皇(37=友綱部屋)も豊真将をはたき込み、それぞれ白星発進した。

 「明るい大関」を目指すと公言している把瑠都だが、大関初勝利を収めても笑顔は出なかった。土俵上では口を真一文字に結び、無表情で手刀を切った。帰りの花道では首をひねって舌をぺろり。支度部屋でも「緊張したか?」の問いに「全然してない。いや、ウソです…」と本音をぽろり。新大関初日の重圧は想像以上に大きかったようだ。
 しかし、相撲は豪快そのもの。先場所「自信がついた」という“もろ手突き”で栃ノ心の体を起こした。「四つに組むイメージだった」と予定していた立ち合いとは違ったが、その後は左、右とのど輪で押し込み、相手の体を十分に起こしてからタイミングよくはたき込んだ。
 大関昇進後は角界の看板として、「(鳩山)総理大臣と桜を見る会」など連日、数多くの昇進イベントに出席。師匠の尾上親方(元小結・浜ノ嶋)は「上がったら仕方ない」と言うが、本人は「正直、その疲れはある」と稽古を十分にできないジレンマに陥った。だが辛抱しなければならない理由があった。母国からの声援だ。エストニアでは取組結果が連日、写真付きで新聞に掲載され、テレビのニュースでも映像が流れる。大関昇進後に地元紙が行った「エストニアで最も優れた男性スポーツ選手」というアンケートでは、トリノ五輪のスキー距離で連覇を果たした国民的英雄のベールパルを抑え、70%以上の支持を集めて断然の1位に輝いた。
 「力になる。ありがたい」。この日から国技館で新発売された把瑠都弁当200個も午後1時の時点で完売するなど、日本の相撲ファンの間でも注目度はNo・1。「まだ初日。まあ、これからこれから」。小さな声でつぶやいた新大関の戦いは始まったばかりだ。

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2010年5月10日のニュース