けいこ量激減 マイペース…レベル低下目立つ大相撲 

[ 2009年4月25日 08:50 ]

 「けいこは本場所のごとく、本場所はけいこのごとく」は、大相撲で不滅の69連勝を誇る横綱双葉山が残した名言だ。とにかくけいこに精進せよという意味だが、最近になって力士のけいこ量は激減。本場所でも熱戦は数えるほどで、全体的なレベルの低下が叫ばれている。

 春場所千秋楽翌日の3月30日に開かれた横綱審議委員会。横綱白鵬の独走に終わった場所に、鶴田卓彦委員長が異例の苦言を呈した。「観客からお金をちょうだいして見てもらっているのに、手に汗握る相撲が何番かはあってもいいのでは。もっとけいこを厳しくしないといけない」
 この発言に対し、同席した日本相撲協会の九重広報部長(元横綱千代の富士)が「みんなけがを抱えながら頑張っている。老体にむちを打っている人もいますから」と苦しい説明をする一幕があった。
 4月中旬から始まった春巡業で、熱心にけいこを積んだ力士はごくわずかだった。週末のみの開催という変則日程ではあったが、朝青龍、白鵬の両横綱はぶつかりげいこで軽く胸を出すだけ。大関陣は日馬富士が少し目立つ程度で、日本人力士のホープとして期待される稀勢の里や豪栄道、豊ノ島らの影は薄いままだった。ほとんど汗をかかなかった朝青龍に「巡業で大事なのはけいこなんだから、若手はもっとしっかりしないと駄目だ」と言い放たれる始末だ。
 背景には、高校や大学でアマチュア相撲の実績があり、すぐに出世する力士の増加がある。元高校横綱の豪栄道は「巡業ではどうしても自分のペースがつかめない」と弁明するが、大島巡業部長(元大関旭国)は「大学などから入って、あっという間に強くなる人はマイペース。白鵬もけいこ量が少なくなってきたけど、周りもやらないから場所で普通に勝てる」と指摘した。
 同志社大出だが、地道な鍛錬に定評がある関取最年長の37歳、土佐ノ海は「一昔前なら、けいこをしなかったら弱くなるという自覚がみんなにあった」と嘆く。
 力士の気質が変わったのだろうか。体重248キロで人気の山本山のように、けがを恐れて場所中のけいこも全くやらない関取が増えてきた。小さな体ながら三賞受賞19回や金星16個の史上最多記録を誇る元関脇安芸乃島の千田川親方は「全体のけいこ量がぐっと減ったから今の相撲はつまらない。幕内上位にしてもレベルは確実に落ちている」と切り捨てた。

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2009年4月25日のニュース