仕切り焦ってしまった琴欧洲もう負けた

[ 2008年7月14日 06:00 ]

黒星スタートにガックリの琴欧洲

 綱獲りの期待は一瞬で落胆に変わった。大相撲名古屋場所初日は13日・愛知県体育館で行い先場所に悲願の初優勝を果たし、今場所に綱獲りが懸かる大関・琴欧洲が、不戦敗をはさんで5連敗中と苦手の安美錦に敗れて黒星発進。14勝1敗以上での優勝が昇進条件とされており、早くも厳しい状況となった。単独4位の23度目優勝を狙う横綱・朝青龍も豊ノ島にまさかの敗戦。3場所ぶり賜杯奪回を目指す横綱・白鵬は白星でスタートした。

 別人だった。立ち合いで安美錦の強烈な当たりを顔面に受けると、琴欧洲の体は完全に浮き上がった。回転のいい突き押しをモロに受け、まわしに手をかけることすらできずにズルズルと後退。2メートル3の巨体は、なすすべもなく簡単に土俵を割った。綱がかすむ、痛すぎる1敗。背を丸め、花道を引き揚げていく大関の目はうつろだった。
 安美錦には不戦敗を含めて5連敗中。通算でも5勝8敗と分の悪い相手に完全にのまれた。立ち合いで相手が仕切る前から長々と仕切り線に手をつき、動きを待った。攻めの体勢でなく、受けの態勢。この時点で勝敗は決していた。琴欧洲は「一瞬“待った”だと思った。向こうは手をついていなかったでしょ?」と報道陣に問いかけたが、温厚な佐渡ケ嶽親方(元関脇・琴ノ若)は「何をあんなに先に仕切っているのか。考えすぎ」と珍しく声を荒らげた。
 この1敗で綱獲りも絶望的となった。北の湖理事長は昇進に関しては何も言わなかったが「普段通りの立ち合いをしないとこうなる。安美錦は読んでいたんだろう」と内容の悪さを指摘した。過去には1979年の三重ノ海(現武蔵川親方)、81年の千代の富士(現九重親方)ら、黒星スタートから14連勝で昇進を実現させた例はあるが、相撲内容の悪さが大きなマイナス要因となった。
 黒星直後は無言も珍しくない琴欧洲が、支度部屋では努めて淡々と「きょうは終わった。あした頑張る。気持ちを切り替えて」と話した。精神面の弱さを指摘され続けてきた大関が見せた多少の成長が、せめてもの救いだった。

続きを表示

2008年7月14日のニュース