福士フラフラ 初マラソンは惨敗19位

[ 2008年1月28日 06:00 ]

初マラソンの福士はゴールを目前にして転倒

 “トラックの女王”が無残に散った。大阪国際女子マラソンは27日、大阪市の長居陸上競技場発着で行われ、北京五輪の代表選考会で初マラソンに臨んだ福士加代子(25=ワコール)は30キロから急激に失速。ゴールの長居陸上競技場手前で1度、トラックに入ってからも3度転倒するほどフラフラになり、2時間40分54秒の19位に終わった。本格的なマラソン練習を積まずに挑んだ初の42・195キロは、厳しさを痛感する結果となった。マーラ・ヤマウチ(34=英国)が2時間25分10秒で優勝した。

 元気いっぱいにスタートしたトラックの女王は終盤、悲劇の主人公に姿を変えていた。完全なスタミナ切れで足元がおぼつかず、何度も涙をぬぐうようなしぐさをした。長居陸上競技場を目前にした残り570メートルで転倒した福士は、トラックに入ってから残り300メートルで再び前のめりに倒れ込んだ。観衆が悲鳴を上げる中、残り170メートルでは転んで顔面から落ち、さらにゴール直5メートルでも転倒。五輪や世界選手権でもないのにフラフラの状態で完走したのは、女王の意地だったのか。そのまま医務室に消えると、大会事務局を通じてコメントを発表した。

 「30キロすぎで急に目や足に違和感を覚えた。長居陸上競技場が見えてからは頭の中が真っ白になり、全く記憶がない」

 序盤は快調だった。スタート後すぐに先頭に立ち、独走態勢。5キロを16分34秒、10キロを33分11秒と永山監督の指示を完ぺきに守った。野口みずきの大会記録2時間21分18秒に匹敵するハイペースも、トラックで日本最高のスピードを誇る福士にとっては余裕だった。だが、大阪城公園内の起伏で消耗し、30キロを前にペースダウン。30キロすぎに異変が起きた。永山監督によると、福士は「目の前が真っ暗になった」と説明したという。30キロ地点で2分2秒差あったマーラ・ヤマウチに34・6キロ地点で並ぶ間もなくかわされると、抵抗する力は残っていなかった。

 “福士流”の挑戦は、マラソンの常識の前にはね返された。準備期間はわずか1カ月、マラソン練習の定番である40キロ走は1回もなし。トラックの実績から招待選手の資格はあったが、レースに集中するため一般参加にこだわり、事前取材もシャットアウトして希望通りレースに集中できた。永山監督は「マラソンではもっと綿密な計画が必要だと感じた」と話したが、言い訳不要の惨敗だ。

 昨年のエチオピア合宿、世界選手権などでアフリカ選手との差を痛感。世界の舞台でメダルに近いのはマラソンと判断して42・195キロに挑んだが、待っていたのは厳しい現実だった。今後は本職のトラックで北京出場を狙うことになる。「(初マラソンは)おもしろかったかな、ハハハ…」と言葉を残して競技場を後にした福士。力ない笑みが、ダメージの大きさを物語っていた。

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2008年1月28日のニュース