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こだわり旬の旅

【岩手・八幡平&宮城・松島】地熱が生んだ世界で1つだけの彩り

[ 2016年5月3日 05:30 ]

地熱蒸気染めを手に取って見せる一行さん。淡い色から鮮やかな色まで多種多彩だ
Photo By スポニチ

 今年指定60周年を迎えた十和田八幡平国立公園。その中に位置する岩手県八幡平市の日本初の地熱発電所「松川地熱発電所」が新たな電力源の供給所として注目されている。地熱エネルギーは同時に温泉や地熱蒸気染めなどに利用されて人気。お隣・宮城県松島では、民謡でおなじみの瑞巌寺本堂が7年ぶりにリニューアル公開されて話題。復興著しいみちのくへ向かった。

 青森、秋田、岩手3県にまたがる高原台地で、岩手山(標高2038メートル)やモッコ岳(同1578メートル)などの火山が並び「火山の博物館」ともいわれる十和田八幡平国立公園。その南側、八幡平(同1613メートル)から岩手山にかけてが八幡平地域で、火山の数は40以上。松川地熱発電所はそんな自然の中で噴出する蒸気を利用した発電所だ。

 運転開始は1966年(昭41)。当時の認可出力は9500キロワットだったが、現在は2万3500キロワットで八幡平市内の電気のすべてをカバー。高さ46メートルの円錐形の冷却塔は原子力発電のそれにも似ているが、エネルギー源はまるで異なる。

 この地熱エネルギーを利用して染色したのが地熱蒸気染め。染色デザイナーの高橋陽子さん(68)が考案した絞り染めだ。陽子さんはアートフラワーが好きで染料の扱いに慣れていたこともあって、77年(昭52)に商品化に成功。今では長男・一行さん(42)とともに発電所そばの松川温泉でペンション「アルペンローゼ」と工房「夢蒸染」を営み、地熱染めの製作販売に力を入れている。

 「蒸気に含まれる希薄な硫化水素が染料(15~16種)に作用して独特の色合いや模様を創り出すのが地熱染め。ただ硫化水素には脱色作用があって、染料を定着させる一方で脱色させる働きも。これを手作業でやるので1枚1枚変化して、同じものはありません」と一行さん。ペンションにはドレスやワンピースをはじめシャツ、ブラウス、ハンカチ、テーブルウェアなどさまざまなものが並ぶが、確かに同じ模様は一つもない。

 向かい側の工房では、この着色と絞りが体験できる教室を開催(要予約)。ハンカチタイプ(2500円)で約1時間半の作業だが、仕上がりまでは3~4時間。この間に開湯270年の歴史を持つ松川温泉の湯を楽しむのもいい。

 ここも地熱で温められた温泉で、泉温60度の白濁した単純硫化水素泉。3軒の旅館のうち、60年前に開業した「峡雲荘」の露天風呂(日帰り500円)に入ったが、周囲や中央に大小の岩石が配され秘湯ムード満点。遠くには発電所も見え、全身が地熱エネルギーで癒やされるよう。原発の危うさがささやかれる昨今、地熱は大地からのメッセージなのかもしれない。

 ▽行かれる方へ 東北新幹線盛岡駅でいわて銀河鉄道に乗り換え、好摩駅でJR花輪線に乗り換え、大更駅からバス1時間。車は東北道松尾八幡平ICから約30分。問い合わせは八幡平市観光協会=(電)0195(78)3500、地熱染色研究所=(電)同2451、東北自然エネルギー=(電)022(222)3998。

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